[第3号] 生き延びてきたホモ・サピエンスと言葉の力
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吉田良夫メールマガジン [第3号]
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今月のメルマガ 2015年9月
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【1】生き延びてきたホモ・サピエンスと言葉の力
【2】法律コラム ~交渉ノウハウ~
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【1】生き延びてきたホモ・サピエンスと言葉の力
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こんにちは。メルマガ第3号です。
前回はテレビ体操をご紹介しましたが、今回も私が感銘を受けたテレビ番組
のことを紹介したいと思います。
それは7月29日に放送されたNHKアーカイブスの「地球大進化 第3回
ヒトへと通じる道」です。
ここでは地球が星の衝突により形成されたという話や地球全体の超高温時代、
地球全てが分厚い氷に覆われた全球凍結(スノーボールアース)時代の
説明などがあり、それはそれで非常に面白かったのですが、私が一番
関心を持ったのは、人類といわれる種族が20数種類も存在し、そのなかで
唯一生き残ったのが我々ホモ・サピエンスだというお話です。
最初の人類は、植物の根を食べる草食種族と他の生き物を捕らえて食べる
種族に分かれ、前者が滅び後者の肉食狩猟の種族が生き残ったとのことでした。
そして肉食の種族の脳が大きく進化し、北京原人とかジャワ原人とかも
ありましたが、最後に残った種族がネアンデルタールとホモ・サピエンスの
2つで、両者とも脳の大きさは同じでした。
ネアンデルタール人はホモ・サピエンスと肉体的能力はほぼ同じで、相当に
がっちりとした体つきで氷河期のヨーロッパ地区で優秀な狩猟ハンター
として生活し、しかも埋葬などの習慣もあったようで精神的な部分での発達
もあったようです。
ところが、番組では専門家の解説を交えながら、ネアンデルタール人はの
どの構造から母音を発語することができず、そのため複雑な言葉を使うこと
ができなかったという見解を紹介しています。
他方で、ホモ・サピエンス(現在の我々のことではありますが)は、
十分な母音の発音が可能だったので複雑な発語が可能で、しかも
遺伝子分析の結果として脳の中で言語能力を扱う部分が存在していたという
説明もありました。
なお、ネアンデルタール人の遺伝子分析ではその言語能力の遺伝子はなかった
そうです。
そして、当初アフリカで生活していたホモ・サピエンスはネアンデルタール人
が生活していたヨーロッパ地区に進出し、ついにネアンデルタール人は絶滅し、
人類で生き残ったのはホモ・サピエンスだけになった、というわけです。
番組では、ホモ・サピエンスは言葉によって自分たちの経験を次の世代に伝え、
さらには言葉によって狩猟の予想すらできるようになり、厳しい氷河期を生き
延びることができたという説明がありました。言葉がいかに大切な役割を
果たしているか、それはそのまま現在の我々にも当てはまります。
人類は昔から言葉の力とともに進化向上し生き延びてきた、それは現代社会の
我々も同様です。
我々は言葉により複雑なコミュニケーションをすることができます。
さらには「言霊(ことだま)」という言葉があるように、言葉が知らず知らず
のうちに脳の潜在意識領域に情報を送り込み、それにより各人の潜在意識が
力強いもの・良いものになり、逆に弱々しいもの・悪しきものにもなります。
言葉は各人の人生を大きく左右するものなのです。
まさに言葉が種族を生き残らせ、人生を大きくも小さくも、強くにも弱くにも
変えてしまうといった、言葉の絶大な力を再認識することのできた、
興味深い番組でありました。
皆様はどう思われますでしょうか?
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【2】法律コラム ~交渉ノウハウ~
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今回はビジネスにも役立つ交渉ノウハウについて皆様と一緒に考えてみたいと
思います。
最初に大事なことは、交渉は交流(仲間づきあい)ではない、ということです。
以下、私なりの視点で交渉ノウハウを整理してみました。
(1)事実と意見(主張)の峻別
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事実と意見(主張)を厳密に区別することは非常に重要です。意見(主張)は
事実とは別の概念であり、相手が交渉の結果として希望する内容にすぎません。
また、交渉においてどんな交渉結果を希望することも相手の自由です。
そこで、いちいち相手の意見(主張)に対し感情的になると相手の術中に
はまってしまい、自分にとっての合理的な結論が見えなくなるおそれがあります。
特に感情的になってしまうとその判断が難しくなります。
そこで、交渉では、いちいち相手の意見(主張)に振り回されず、自分の意見
(主張)を説得的にする事実を探し出し、その事実を交渉の場面で効果的に
相手に示すことを考えるべきです。
(2)事実の発見法
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自分の意見(主張)を裏付ける有益な事実はなかなか見つからないかもしれません。
そういうときは以下の視点で整理してください。
① 紛争の経緯を時系列で整理する。
② キーマンの言動を時系列で整理する。
③ お金の流れを時系列で整理する。
④ 誰かが嘘を言っていないかという視点で分析する。
⑤ 誰かが誤解していないかという視点で分析する。
⑥ 自分が知っている事実は全体の中の一部分の事実にすぎないのではないか
という視点で分析する。
⑦ まだ重要な事実が存在しているのではないかという視点で分析する。
(3)相手の主張を客観的に分析する
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交渉では相手の主張は単に相手の意見にすぎないのですから、相手の意見を
相手の客観的な利害状況を前提にして合理的に分析することが大事です。
そうすると、相手の主張が単なる「おどし・はったり」にすぎないのか、
相手が決意を固めて譲歩の意思がない状況なのか、といった微妙な相手の
心理状態も読み取りやすくなります。
相手の真意を探るという姿勢は交渉において、とても大事なことです。
(4)感情的にならない
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重要なことです。しかし、意外と難しいことです。
自分の感情を制御して交渉し続けることができれば大抵の場合、その交渉は
大崩れしないで結果的に実りあるものになります。
(5)相手のストーリーを分析し予想する
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自分の立場、相手の立場の双方をできるだけ客観的に分析し、相手の立場に
たって、相手のストーリーを考えるという姿勢はとても有効な交渉技術です。
ところで、ここで大事なことは、自分の感覚・常識・世界観をものさしにして
交渉すると交渉は混乱し失敗する可能性が高まります。
他方で、相手の感覚・常識・世界観をものさしにして、そのうえで自分が
目標とする交渉結果を目指して交渉すると、よい結果を得る可能性が
高まります。
自分の立場と相手の立場を客観的に分析して、「相手はどの程度なら受諾
できるのか」という問題意識をもつことも交渉の際の大事なポイントです。
(6)相手を分析する
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例えば、身なりがまともで、自己紹介と名刺交換がスムーズに行え、
目つきと口調に違和感がなければ、その交渉相手は合理的な計算のできる
タイプである可能性があります。
そのような相手であれば、こちらが示すシグナルを察知して、双方にとって
合理的な妥協点を見出すための協議を進めることができるかもしれません。
他方で、目つきがキョロキョロし、小声・早口で、そわそわしている
様子ならば、心にやましいものをもっている可能性があります。
また、目つきが険しく、口調が攻撃的でとげとげしく、自己主張ばかりならば、
癇癪的な激情家かもしれません。相手の分析は重要です。
(7)威圧方式は交渉には有害無益
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いうまでもないことです。威圧方式では交渉はうまくいきません。
(8)文字による整理
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相手の主張も自分の主張もその内容と根拠を文字にして整理することは
非常に重要です。人間は文字で思考が整理されます。
また、気持ちが落ち着き、冷静さをとりもどすきっかけになります。
(9)信頼関係と共感の重要性
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交渉では相手との信頼関係は不可欠です。相手から「敵側であるが、
あの者の言うことは信用できる。」というような信頼を得ることが
交渉成功の秘訣です。
その意味で、交渉は相互の客観的状況を冷静に理解したうえで、
互いに信頼を寄せ合うことが可能になり、相互に共感を覚えるような
状態になって合意に至ることができると考えた方がいいかもしれません。
少なくとも私はその方針で考えています。
お読みいただき、大変ありがとうございました。
今度ともよろしくお願いいたします。
吉田 良夫