【第96号】◆2024年もよろしくお願いいたします。~変化の大きな刺激的な年になりそうです~

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 今月のメルマガ              2024年1月号
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◆2024年もよろしくお願いいたします。
~変化の大きな刺激的な年になりそうです~
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皆様

おそくなりましたが、明けましておめでとうございます。

1月1日の令和6年能登半島地震は大変厳しい災害でした。
この地震で被災され被害に遭われた皆様に、
心よりお見舞い申し上げます。
そして、皆様の安全と被災地の一日も早い復興を
心よりお祈り申し上げます。

また、1月2日の羽田空港航空機事故で被災し
被害に遭われた方に対し、心よりお見舞い申し上げます。
そして、大変な危険が迫るなか、短時間で見事に全員脱出し、
生還したJAL乗客乗務員の方々に敬意を表します
(海外報道では「奇跡的」という表現が使われました)。

ところで、みなさまご承知のとおり、
今年に入り株式市場はバブル後の高値を連日更新し続けています。
(1/16現在)

現在のゼロ金利、マイナス金利は、景気回復のためにアメリカ・
イギリス・EUでも行われたようですが、日本ではゼロ金利・
マイナス金利政策が長期継続してしまい、
その長さが異例という評価のようです
(ネットレベルで読書的学習はしたのですが、なかなか難しく理解不足です)。

きっとバブル崩壊後の経済回復がうまくいかなかったからでしょうね。
しかし、日本だけ社会経済の発展(進化)から取り残され、
タイムカプセルに閉じこもって暮らすわけにはいきません。

日銀は急激な為替変動(円安ドル高から円高ドル安への急激な移行)、
輸出企業へのマイナス効果(円安利益が急に吹き飛ぶ)等の
リスクを慎重に見定めながら、異次元金融緩和の終わりに行くことでしょう。
その際には大なり小なりの「振動」がありそうで、
今年の日本はその影響を経験することになりそうです(少し怖いですが……)。

身の回りの日常生活では、賃金も物価もほぼ固定というデフレ時代から、
「物価も上がるが賃金(給与、収入、所得)も上がる」という時代に入ろうとしています。
収益力のある企業は時代に遅れまいと給与待遇を
大幅にアップする方針に切り替えつつあります(そのように見えます)。

従業員の給与待遇を向上する企業は、良い商品を提供する強い企業として、
商品の販売価額を値上げすることでしょう。
良い商品や良いサービスは適正価格で販売しなくてはなりませんから、
販売料金の値上げは自然なことだと思います。

公正取引委員会も昨年2023年11月29日付けで、
上場企業だけでなく中小企業同士の取引も対象に含めて
(中小企業も含まれることに注意してください)、
発注者が取引相手の料金値上げ要請を無視や拒絶することが
独占禁止法違反(優越的地位の濫用)や下請法違反(買いたたき)に該当し、
制裁対象になる可能性があるという通達を出しました。

これについては吉田総合法律事務所のサイトでもご紹介していますので、
ご興味がありましたらお読みください。
■「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」とは?
独占禁止法上の優越的地位の濫用と下請法上の買いたたき
https://yoshida-law.us11.list-manage.com/track/click?u=9b78c20553f238da5c697d1d4&id=9795d8761c&e=195a2b61c0

つまり、今年の日本もいろいろなことがありそうです。
今年は日本が長かった社会経済の停滞から脱皮し、
多方面で成長し発展する記念すべき年になりそうです。
そしてこの日本の成長発展の変化を、
日常生活の中で味わえることは、なんという幸せでしょうか。
ワクワクとした楽しみで一杯の気持ちになります。

本年もどうかよろしくお願いいたします。

吉田良夫

【第53号】web会議の新発見~毎日使うと少しずつ上達する~

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 今月のメルマガ              2020年6月号
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◆Web会議の新発見
 ~ 毎日使うと少しずつ上達する ~

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皆様

いかがお過ごしでしょうか。
前回メルマガ配信の時は、まだ緊急事態宣言の最中でしたが、
それもようやく解除され、電車内も車道もかなり混むようになってきました。
仕事については、抑制されていた経済活動が完全解禁になったことで、
各社が一気に稼働し始めたようです。
私のところもかなり忙しくなっています。

他方で、普段の生活はコロナ前とは大きく違っております。
私たちは、これからも「三密」には十分に注意しながら、
「新しい生活様式」を普通の日常生活にしていくことになりそうです。

また、他国がPCR検査の大量実行をしたのに、日本は検査ができませんでした。
もし症状出始めの段階でPCR検査実行をしていたら、
失った命も失わずにすんだかも知れません。
経済支援も到底先進国とは言えない状況でした。

アメリカその他先進国が短期間での現金支給などを実現したのに、
日本は例の1人10万円を支給できていないところもあります。
日本の将来のために、発想を変えて、短期間で経済支援の現金給付ができるように、
PCR検査や抗体検査も先進国並に実行できるように、
そして医療機関の方への敬意と感謝の念を示す社会になるように、
努力する必要があると感じております。

ところで、私のいる吉田総合法律事務所では、所員のテレワークを導入していますので、
平日は、毎日、所員とウェブ会議を行っています。

また、各種研修会(勉強会)やオフィシャルな重要会議もZoom開催が増えてきました。
私のところでは、Teams(有料版)、Zoom(有料版と無料版)、Skype を
使っていますが、使っていると「こんなこともできるのか?」という驚きの発見があります。

例えば、招待する側がTeams(有料版)やSkypeですと、
参加者がウェブ会議のソフトを入れていない方であっても、
こちらからメールを送信し、そのメールに書いてあるリンクや 
URLをクリックしてもらえれば、ウェブ会議ができてしまいます。
しかも、画像が鮮明できれいです。

会議参加者のウェブ会議ソフトが一致しないときには、
そして、ハードがPCとスマホといった場合には、このご招待機能はとても便利です。

Zoomでも参加者がPCの場合は同様の便利機能がありますが、
参加者がスマホの場合はこの便利機能は使えません。

また、私のところでは、ウェブ会議参加者が画面共有でワードやPDFの画面などを見て、
誰かが意見を述べて、意見交換をして、画面共有の文章を全員が見ている前で改訂し、
その改訂についてさらに全員が討議をする検討方法が可能になりました
(これはチャットを併用しながらのグーグル社内の会議方式をできる範囲で
参考にしたものです)。

これまでですと、誰かが自分のPCで作成し、それをメール送信し、
翌日あたりに他の人が自分のPCで修正履歴付きで改訂し、といった流れでした。
これだと日数がかかりますし、作成中は1人が自分のPCで行うので、
他の方は、作成者(改定者)がどのような考えで改定したかを
修正履歴から推測することになり、非効率、不正確になりがちでした。

それが、私のようなデジタル音痴でも、グーグルの会議方法を部分的に
採り入れることで、会議の生産性を上げることができるようになりました。
世の中の変化が早くて大きいですから、私も必要に迫られて、
仕事の仕方や道具が変化しています。
自分でも、やむを得ずのこととはいえ、驚きです。

ところで、私のいる吉田総合法律事務所ではホームページに
以下の記事原稿を掲載しております。

「新型コロナウイルスに関連する労務問題Q&A」ご提供について
新型コロナウイルスに関連する労務問題Q&A
当事務所のビジネス契約書の検討方針について
ビジネス契約書のチェックポイント

コロナウイルスによる労務問題は激動の4月5月が経過したから終り
というわけではありません。
また、法律問題は後から問題になることが多いので、
現時点でもホット・イシューと思います。
また、コロナ第二波への備えという意味でも重要です。

契約書も非常に重要な分野です。
有事である社会の変動期には従前のビジネスが継続できなくなり、
契約の内容変更の交渉、新規ビジネスについての契約交渉(合意)
といった平時には見られない契約の動きがあります。
そこで、この機会に契約書業務の考え方とサンプルを掲載しました。

ここまでお読みいただいた皆様に深く感謝します。

吉田 良夫

[第37号]カルロス・ゴーン氏の逮捕で思ったこと~幸せってなんだろう~

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今月のメルマガ               2018年11月
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◆カルロス・ゴーン氏の逮捕で思ったこと
~ 幸せってなんだろう ~

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皆様

11月も下旬になりますと、あと1ヶ月ちょっとで来年ですね。
子供は1年を長く感じるけれども、大人は年を重ねるごとに
1年を早く感じるようになる、と聞いたことがありますが、
私にとってはまさにその通りです。

ところで、最近、びっくりしたニュースがありました。
皆様ご存じの、あの「カルロス・ゴーン」氏の逮捕です。

「まさか…こんなことが…」

という状態ですね。

今回のゴーンさんの逮捕容疑は、(今のところ)有価証券報告書に
報酬額の虚偽記載をしたという罪です。

有価証券報告書虚偽記載罪というのは、
たとえば、実情は大赤字で倒産寸前なのに、投資家が読む有価証券報告書に、
「うちは儲かってまっせ。期末の儲けはこんなに儲かる見込みでっせ」
という嘘記載をされると、投資家はだまされて投資をする
(株を購入する)かもしれません。

そして会社が倒産になれば、嘘記載を信じて株を買った人は損をします。
また、そういうことがまかり通ると誰も株を買うという投資を
しなくなります。

そこで、そのような投資家の投資判断を間違えさせないために、
有価証券報告書には嘘を書くな、という規制をしています。

つまり、有価証券報告書虚偽記載罪が予想しているのは粉飾決算の事例です。
ところが、今回は経営トップが受領した報酬額を過少記載した
という事例です。

ゴーンさんの行動は倫理的にはめちゃくちゃで、
開いた口がふさがらない(ただただ、唖然…)という状態ですが、
それでも投資家が自分の儲けのためにどこの会社に投資するか
という判断の局面では、赤字なのに儲かっているという虚偽記載を
する典型的事例とは違います。

それに私は、私がとっている新聞その他の報道から、
ゴーンさんとケリーさんの罪は、特別背任罪という会社役員の罪
の方がどんぴしゃりじゃないか…
という感覚をもっていました。
(もしかしたら、今後、特別背任罪に進むかもしれませんし、
そうではなく、特別背任罪にすると他のところで「問題」が
生じるという判断で特別背任罪を使わないで「けじめ」を
つける方針なのかもしれません。
これは時間が経過するとすべて分かりますね。)

また、報酬ごまかしの事例では納税関係で問題が生じることが
あり得るので、もし税務申告に「ごまかし」(故意)があると、
脱税ということになりかねず、脱税額が一定額を超えると
それだけで実刑になってしまいます。
そこのところ(納税)はどうなんだろう、と思っていました。

そんななかで、インターネットニュースを検索したわけですが、
インターネットではいろいろな情報が掲載されていました。

ゴーンさんもケリーさんも、逮捕・勾留の段階ですし、
判決で有罪が確定するまでは無罪という前提で扱われるべきです。

それに両名とも「否認(認めない)」という立場のようです
(もしかしたら事実関係から「まったく違う」と言って
いるのかもしれませんね)。

ただ、この両名を逮捕すると言うことは、
日本とフランスの国益問題に特捜が割り込むわけですから、
検察は確実な証拠を収集済みで、上層部を含めかなり慎重な
判断をしたものと推察します。

そこで、現時点で報道されている内容を前提にして
本件を少しだけ見てみようと思いました(推定無罪の
刑事原則と真逆の扱いをしてしまいそうで怖いのですが……)。

ゴーンさんがケリーさんに指示をして、ケリーさんが部下の
外国人執行役員1名と日本人幹部社員1名にメールで
不正行為の指示をしたらしいです
(もし本当ならメールで不正行為指示をするなんて信じられません
不正をする人は不正指示を口頭で行うことが多いのですが…。)。

そのメール指示をうけた外国人執行役員と日本人幹部社員の
2名(不正行為の実行者)が、東京地検特捜部と司法取引を
したそうです。

そして、ケリーさんが不正行為を指示したことの物証として、
メール等を東京地検特捜部に提供し、東京地検特捜部が
ゴーンさんが逃げられないタイミング(飛行機で日本に来るところ
を空港で逮捕令状をもってお出迎え)で逮捕となったようです。

司法取引者は上記2名だけで会社(日産)は司法取引対象者では
ない、とのことです。

インターネットニュースのおかげで、ちょっぴり雰囲気が
分かったような気がしました。

裁判による真実解明はまだまだ先のことと思いますが、
逮捕ニュースが衝撃的だったので、すこしでも逮捕側の
初動の事情が分かって、よかったです。

もうひとつ、私がどうしても「理解できない」ことがあります。
それは腹心のケリーさんの行動です(あくまで逮捕側の認識を
前提にしたもので、ケリーさんは否定しているかもしれませんが)

ケリーさんは弁護士出身らしいです。
弁護士出身なら、たとえ日本の法律に精通していなくても、
法律の中身(法規制)はどの国もかなり共通していますから、
ゴーンさんと自分(ケリーさん)がやっていることが、
どれだけの重罪か、どういう結末になるか、ということを
十分に分かっていたはずです。

それに、不正指示をメールで行ったとのことですが、
弁護士出身のケリーさんが自分で自分の首に縄をつける物証を
つくるとは。

……(もし事実なら)正気の沙汰とは思えません……

ゴーンさんもケリーさんも、まさか、「絶対にばれない」と
でも思い込んでいたのでしょうか。

ちなみに、単独犯で事情は自分しか知らない、というときは、
「ばれない」ということはありえるかもしれません。
単独犯と思われる殺人事件で迷宮入り事件があるのは、そのためです。

しかし、犯行者が複数の場合や犯人以外で事情を知っている者が
いる場合は、「ばれる」可能性は非常に高くなります。

それなのに……。

私は、ここで、敬愛する中村天風先生の人生観を思い出しました。

天風先生は、

「正直、親切、愉快に」

と断言しています。

その方が幸せになるからです。
そして、「幸せとは心が平安な状態なこと」と定義しています。

お金や地位がどれだけあっても、「心が平安でない」なら、
それは幸せではありません。

ゴーンさんは、いままでの暮らしと全く違う「東京拘置所」に
いるらしいです。

東京拘置所といえば田中角栄氏の言葉を思い出します。
自宅の中に文献があるはずですが、次のような言葉だったという
記憶です。

「俺はだれよりも小菅(東京拘置所のことです)のことを知っている。
あそこでは花なんか無駄だ。食い物を持って行け。」

東京拘置所は超高級ホテルとか超高級住宅とは全く違う
居住環境ですから大変だと思います。

これからのことを考えて不安と恐怖でいっぱいで、
「心は平安」どころではないと思います。
本当に大変な状態だと思います。

今回の事件で思いました。

私は Much Money でなくても Some Money があって
(No Money は困りますが……)、
「心は平安」であれば、
そちらの方がずっといいです。

今回のゴーンさんとケリーさんの逮捕は、
あまりにびっくりしたニュースでしたので、自分の気持ちの
整理をかねて、私が感じたことをまとめさせていただきました。

今回はかなりの長文になってしまいましたので、
最後までお読みいただいた方には本当に感謝申し上げます。
(次回は短いものにしますので、次回もよろしくお願いいたします。)

 

吉田 良夫

[第9号] ニコニコ円満相続のために(泥沼争族にならないために)

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吉田良夫メールマガジン [第9号]
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今月のメルマガ              2016年5月
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ニコニコ円満相続のために(泥沼争族にならないために)

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皆様

皆様のゴールデンウィークはどのようにお過ごしされたでしょうか。

私はGW直前の4月28日(木)の午後から風邪症状が出始め、
それがけっこう本格的な風邪になってしまい、翌日の29日からGWを
ほとんど風邪の回復にあてるという有様でした。
そのおかげで、風邪を引かないで自分の思うとおりに動けるということが、
いかにありがたい(有り難い)ことかを再認識できました。
まさに健康のありがたさを実感いたしました。

また、結構な風邪症状になってしまい、まともに動けなかったので、
どうして風邪を引いたのかを手帳を見ながら考えてみました。
そうすると、どうも1ヶ月前くらいから、「風邪気味、注意」とか、
「疲れがたまりかけているから注意」といった書き込みがありまして、
疲れと少しの風邪症状が積もり積もって、GW直前に「発症」と
なったようです。
結果には必ず原因ありというわけでした。

皆様も疲れを感じたときは、普段より少し多めに休養をお取りいただき、
風邪などお召しにならないようにされてください。

* * *

さて、今回は相続と遺言状について少しお話をさせてください。

私は、いつ頃からか、常に相続と遺言状の案件を扱うようになりました。
今現在も、数件、ご対応しております。

もしかしたら、私が事業承継と経営権問題を多く扱っているので、
それに近接する分野ということで相続と遺言状のご依頼がだんだんと
増えてきたのかもしれません。

相続は不思議なものです。
笑顔ニコニコ円満相続(遺産分割)もあれば、骨肉の争いを意味する
「争族(そうぞく)」になることも少なくありません。

特に、家督相続的発想で遺産分割をするときとか、親が事業を営んで
いて子息子女が事業承継として相続を考えるときなどは、
相続人間の基本的な前提が違うために争族になりやすい(ドロドロ
案件になりやすい)です。

また、相続人の誰かが返済困難な多額の借金を抱えているときも、
遺産の配分を巡り争族になりやすいです。

それだけでなく、まさに人間の業のようなものでしょうか、
経済的・社会的地位がある方同士でも、兄弟姉妹間や親子間の
「仲の悪さ」が主因で争族になることもあります。

そして、これらの争族になりやすい事情があるときに、親が
遺言状を残さずに死亡すると大変です。

遺産の配分は、遺言状がないときは、相続人間の協議(遺産分割協議)
か、調停(裁判所での相続人全員の合意)か、審判(裁判所が下す判断)
で決めることになります。
スムーズな遺産分割協議で決まらないと、「争族に向けて一直線」に
なりやすいです。

ちなみに相続税が発生する事案でも、税金は納期限を待ってくれません。
納期限経過後は所定の税率に従い延滞税が付加されます。
ですから相続税を支払う案件で争族になると税金の支払いも大変です。

特に家業で事業を営んでいるケースで争族になってしまい、
株が仲の悪い兄弟姉妹間で分散してしまうと、そこに会社法に詳しい者
(大抵は弁護士ですが、弁護士資格のないコンサルタントの場合も
あります)が経営権奪取や金銭獲得目的で経営者ではない相続人に
アドバイスをするといった事態もないとはいえません。

残念ながら、中小企業は厳密な意味で会社法の法規を遵守しきれて
いないことが多く、いちゃもんのタネはいっぱいあることが普通です。
そうなると経営基盤が盤石ではない中小企業にとっては大きな混乱に
なりかねません。

このようなドロドロ劇を避けるためには、言われ尽くされていること
ではありますが、遺言状の作成が大事になります。

ただ、自分で書いただけの自筆証書遺言ですと、それは無効だと言って
有効性を争ったり、それとは違う自筆証書遺言(年配の弁護士で
「あり得ない証拠」のことを「お化け」という方もいましたが…)
が出て来たりという事案もあります。

恋愛感情が憎悪感情になって残虐な殺人をすることもあるのが人間ですから、
何が起きるかわかったものではありません。
ですから単に自筆証書遺言があるからといって安心できません。

やはり、ごたごたは人生の不幸ですから、親の責務として、
親自身が健在なうちに、円満な遺産分割のために、公証人による
公正証書遺言で遺産の配分を定めておくことが望ましいと思います。

さらに、公正証書遺言では、付言事項という欄で自分が言い残して
おきたいことを明記することもできます。
親としての「愛情と思い」を公正証書という厳格な書式で明記して、
「くれぐれも争族になるなよ」と伝えることも大事ではないかと思います。

今回は、風邪を引いたこともあり休養のGWとなりました。

そこで、休養しながら、疲弊と苦悩の争族はなしにして、
親子兄弟姉妹のニコニコ円満相続になるための基本的なことをおさらいしました。

今回もお読みいただきありがとうございました。
次回もどうかよろしくお願いいたします。

 

吉田 良夫

[第6号] ヘルス情報 ~腹筋運動が危ない!

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今月のメルマガ              2016年1月
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【1】ヘルス情報 ~腹筋運動が危ない!
最近のニュースより
【2】法律コラム ~追記報告~
元アイドル交際禁止
東京地裁が請求棄却(別判決)
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皆様

少し遅くなりましたが、明けましておめでとうございます。
皆様にとって少しでも楽しく、お役立つものをお届けしたいと
思いますので、本年もどうかよろしくお願いいたします。

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【1】ヘルス情報~腹筋運動が危ない! 最近のニュースより
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今回は、年始めということで、年明けに目にしたヘルス情報から
お伝えしたいと思います。

今年も「よ~し、今年はしっかり運動するぞ。」という決意を
された方も多いと思います。
私もその一人でして、「たるんだお腹を腹筋で鍛えて」、
というようなことを考えていたのですが、そんな私にとって
ショッキングなニュースをお伝えします。

私は年始めのNHKテレビニュースで知ったのですが、
発信源は昨年末のアメリカのウォールストリート・ジャーナルです
(以下、WSJと記します)。
http://torikai.us11.list-manage.com/track/click?u=9b78c20553f238da5c697d1d4&id=7828d9e657&e=348e789b5e

WSJは、両手を頭の後ろで組んで、肘が膝に当たるまで上体を
起こす、誰でもイメージする「普通の腹筋運動(カールアップ)」
が「腰回りを痛める主要な原因」だとする米海軍専門誌の論説や、
カールアップは潜在的に椎間板ヘルニアを発症させる恐れがある
という教授見解を紹介しています。

私はこのニュースを知って、「腹筋運動をしなくて運が良かった」
などと勝手に自分の運動不足を自己正当化したくらいです。
昔はウサギ跳び運動が普通だったのに、今は膝を痛めることがわかって、
ウサギ跳び運動はしなくなりました。「普通の腹筋運動」も
近い将来、ウサギ跳び運動と同じになるかも知れませんね。

ちなみにWSJによると、

カナダ軍は最近、けがにつながる可能性と実際の軍の仕事との関連性が
低いことを理由に、体力テストから腹筋を除外した。

米軍兵士1500人を対象に実施した調査によると、3部門に
分かれた軍の体力測定から派生したけがの56%が腹筋運動に
関連していた。約3・2キロのミニマラソンに絡むけがは全体の32%、
腕立て伏せが11%だった。

そうです。

では腹筋をつけるにはどうしたらいいのしょうか?

カールアップが危険だとしても、複数の腹筋の鍛え方があるそうですが、
WSJはヨガから派生した「プランクポーズ」を好意的に紹介しています。

ネットで調べますと、「プランクポーズ」というのは、
「腕立て伏せをして腕をまっすぐに伸ばしきった状態」のまま、
「肩からかかとまでの部分」を「一直線のラインにして静止する」
ポーズとして紹介されています。
私もやってみましたが、このポーズで静止すると確かに「きつい」運動
になることがわかりました。

ですが、WSJは、上記とは少し違って、「プランクポーズは
腕立て伏せの上がった状態に似ており、かかとから肩までの部分を
水平に保つ。また、肘を床につけた格好で行われることも多い。」と
説明しています。

そして、モデル写真として、女性が腕立て伏せの格好のまま、
肘を床につけて、肩からかかとを一直線のラインにして静止している
ポーズを掲載しています。
つまり、このポーズをおすすめしますよという意味のようです。

なお、WSJは、「プランクポーズは胴体あるいは体幹の前部と側部、
背部の筋肉を使うが、腹筋運動は筋肉のほんの一部しか必要としない」
という説明も付記していて、リスクを回避できて運動効果も高い
という説明をしています。

私も今年は年始めからよいヘルス情報を見つけましたので、
たるんだお腹を少し鍛えることにします。

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【2】法律コラム~追記報告~
元アイドル交際禁止 東京地裁が請求棄却(別判決)
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メルマガ第5号では、東京地方裁判所(裁判官 児島章明)が
昨年の9月18日に言い渡した「元アイドル交際禁止条項違反で
賠償金を認めた判決」を題材に裁判の本質のようなことを書かせて
いただきました。

ところが、2016年1月19日の日本経済新聞(朝刊)、
朝日新聞(朝刊)などの報道によりますと、東京地方裁判所で、
1月18日に(メルマガ5号の事件とは別事件です)、

元アイドルの女性がファンとの交際を禁じた規約に違反したとして、
マネジメント会社が女性と交際相手の男性らに約990万円の
損害賠償を請求した裁判の判決があり、
判決(原克也裁判長)は、
「(契約は)幸福追求の自由を著しく制限している」
「異性との交際は幸福を追求する自由の一つで、アイドルの
特殊性を考慮しても禁止は行き過ぎだ」
という理由で、会社の請求を棄却したとのことです。

やはり最初の判決があまりにもおかしなものだったので、
大手マスコミもこの論点に関心をもって、今回の報道になった
のだろうと思います。

理由や結論は当然のことなのでこれ以上深入りはしませんが、
メルマガ5号でも書いたように、裁判というのは神様ではない
人間が裁判官として、裁判で出された主張と証拠を前提に考えて、
結論を出すシステムにすぎません。

そのため、当事者がどのような主張をするか、証拠として何を
出すかという要素だけでなく、どんな裁判官に当たるかなどと
いう偶然の事情によっても結論が異なってきます。

ですから、冷静に分析し、ファイトを出して、頑張って、
結論が出てもそれであきらめずに次のことを考える、
という「努力」がとても大事です。
私はそのように考えています。

今月もお読みいただきありがとうございました。
そして本年もどうかよろしくお願いいたします。

吉田 良夫

[第5号] 元アイドル交際禁止条項違反で賠償金の判決について

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吉田良夫メールマガジン [第5号]
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今月のメルマガ              2015年12月
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法律コラム

~ 元アイドル交際禁止条項違反で賠償金の判決について ~

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皆様

こんにちは。メルマガ第5号です。

今回は前回第4号で少しだけお伝えした、東京地方裁判所
(裁判官 児島章明)が今年の9月18日に言い渡した
「元アイドル交際禁止条項違反で賠償金」
の判決を題材に裁判の本質のようなことを考えてみたいと思います。

…この事案の概要は以下の通りです…

当時15歳の少女が、2013年3月にアイドルになるためにプロダクションと
専属契約書を締結した。その契約条項には「ファンとの交際が発覚した
場合は、プロダクションは契約を解除し、損害賠償を請求できる」と
いう内容の定めがあった。
また、そのプロダクションには「男友達と2人で遊ぶこと、写真を撮る
ことは一切禁止」という規約があった。

少女はその年の7月にアイドルグループとしてデビューしたが、
10月上旬に男性との交際写真を撮られ、その写真はプロダクションに
渡った。
この時点で交際は世間に知られていなかったが、プロダクションは
10月下旬にそのアイドルグループを解散した。
そして、プロダクションはそのアイドルグループによって得ることが
できたはずの利益として510万円を請求した、
という事案です。

そして、児島章明裁判官は、当時15歳の少女が異性と交際したことが
プロダクションに対する不法行為に該当するので、結論として65万円を
支払えという判決を下しました。
少女は東京高等裁判所で争うことをしないで、この判決は確定したようです。

…判決のポイント…

本件グループはアイドルグループである以上、メンバーが男性ファンら
から支持を獲得し、チケットやグッズ等を多く購入してもらうためには、
メンバーが異性と交際を行わないことや、これを担保するためにメンバーに
対し交際禁止条項を課すことが必要だったとの事実が認められる。

アイドルおよびその所属する芸能プロダクションにとって、アイドルの
交際が発覚することは、アイドルや芸能プロダクションに多大な社会的
イメージの悪化をもたらすのであり、交際禁止条項を設ける必要性は相当高い。

被告少女は、当時本件契約等を締結してアイドルとして活動しており、
本件交際が発覚するなどすれば本件グループの活動にも影響が生じ、
原告ら(注:プロダクション会社)に損害が生じうることは容易に認識可能
であったと認めるのが相当である。
そうすると被告少女が本件交際に及んだ行為が、原告らに対する不法行為を
構成する。

被告少女は交際禁止条項があることを知りながら、故意または過失により
これに違反し、本件交際及び発覚に至ったことは明らかであるから、
債務不履行責任および不法行為責任を負う。

芸能プロダクションは、初期投資を行ってアイドルを媒体に露出させ、
これにより人気を上昇させてチケットやグッズ等の売り上げをのばし、
そこから投資を回収するビジネスモデルを有していると認められるところ、
本件においては本件グループの解散により将来の売り上げの回収が困難に
なったことが認められる。

しかし、プロダクションの指導監督が十分ではなかったので、
少女が支払うべき金額は過失相殺により65万円である。

…私が疑問に思うこと…

プロダクション会社(原告)が交際の事実を知ったのが10月初旬なのに、
10月下旬に早々とグループを解散させたことが合理的な判断といえるのか。
そんなに早々と解散させてプロダクションは不法行為による損害を被った
といえるのか?

アイドルが男性ファンから支持を得るために交際禁止条項が必要なのか。
女性アイドルが男性ファンと交際したら男性ファンからの人気がなくなるのか?

当時15歳の少女が異性と交際すると、プロダクション会社に対するマナー
違反にとどまらず、法律上の「不法行為責任」まで負うことになるのか?

「アイドルとは芸能プロダクションが初期投資をして媒体に露出させ、
人気を上昇させてチケットやグッズなどの売り上げを伸ばし、投資を
回収するビジネスモデルである。」という部分については、
アイドル=人ではなく商品、という前提になっていて違和感があります。

ですが、仮にアイドル=商品という前提で考えても、児島裁判官は
アイドルビジネスの投資回収期間を非常に短期的にとらえているような
気がします。

すぐに儲からないとダメ、最初に傷がついたら「もう使い物にならない」と
言っているのと同じではないでしょうか?

私は、そもそもの話として、交際を広く一般的に禁止する条項は公序良俗に
違反し無効(民法90条)になるのではないかと思えてなりません。

ただ、この事案では、被告にされた少女は本当に大変だったと思います。

せっかくアイドルとしてデビューしたのにグループを解散させられて、
裁判で被告にされて、自分の交際のことをいろいろ言われて、1審判決で
相当に心身が疲れてしまったのではないかと思います。

それが理由で少女は控訴しないで1審判決を確定させたのだろうと
推測していますが、もし控訴して東京高裁で公序良俗違反を主張したら
(私なら公序良俗違反も主張したと思うのですが…)、
1審判決とは逆の「交際禁止条項は無効」という判断になったかもしれないと
思います。

…訴訟で自分の思いや考えを実現させるためには…

このメールマガジン第2号でご紹介したサッカーボール事件(最高裁判所
第一小法廷・平成27年4月9日)では、1審2審で支払義務があるとされた
のですが、最高裁で判例変更により支払義務はないとされました。
もちろん上級審で争っても勝てるとは限らず、実際は上級審での逆転勝利は
確率的に厳しいことは確かです。

ただ、1審の裁判官により下された判決に納得できず、法的に逆転判決の
可能性がありそうだと思えるときは、遠慮しないで控訴して争っても
よいのです。

裁判というのは神様ではない人間が裁判官になって、裁判で出された主張と
証拠を前提にして、結論を出すものなので、どのような主張をするか、
証拠として何を出すか、裁判官がどんな考え方をするか、によって結論が
変わってきます。

だから、日本をはじめとする多くの国で三審制(地方裁判所、高等裁判所、
最高裁判所)のシステムを採用しています。
そして、その三審制によってメルマガ第2号で紹介したような上級審で
結論が変わるという事例も生まれます。

そして、裁判の結論が予想に反するものだったり、上級審で結論が変わって
しまうことを比喩する言葉として、「訴訟は水もの」という言葉があります。
これは法律実務家にとって聞き慣れた言葉なのですが、もしかしたら
初めてお読みになる(お聞きになる)方もいらっしゃるかもしれません。

訴訟で自分の思いや考えを実現させるために、どのような主張がよいか、
その主張のためにどのような証拠を出すべきか。

それでも、訴訟は水もの。結論がおかしいと思うときもある。
でも他の裁判官は違う考え方をするかもしれない。控訴をしようと
思えばできる。さて、どうするか。

裁判ではこのような検討がよく行われます。

この事案では私は判決内容に本当にびっくりしました。
そして、事案のことを考えるうちに、皆様と一緒に裁判という制度の
特性を考えてみたいと思い、メルマガ第5号でとりあげることにしました。

今月もお読みいただきありがとうございました。

 

吉田 良夫

 

[第4号] AV出演拒否違約金判決について

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吉田良夫メールマガジン [第4号]
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今月のメルマガ              2015年11月
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法律コラム ~ AV出演拒否違約金判決について ~
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皆様

こんにちは。メルマガ第4号です。

さて、今回と次回は9月に新聞各紙で掲載された2つの東京地方裁判所の
判決について紹介することにします。

1つは9月18日に言い渡された、元アイドルがプロダクションと契約した
「交際禁止条項」に違反して異性と交際したことを根拠に約65万円の
損害賠償請求を認めた判決です。これは、

「交際禁止」違反 元アイドルに賠償命令
…東京地裁 「男性ファン獲得に条項必要」

という見出しなどで紹介された判決です。

もう1つは、9月9日付けで言い渡された判決ですが、9月25日に確定し
その後の29日の記者会見後に新聞各紙で報道されたものです。

内容は、アダルトビデオに1本出演してしまった女性が、出演の際に
10本出演すること及び出演しない場合は高額な違約金を支払うことを
内容とする契約を締結し(締結させられてしまい)、その後に
出演拒否をしたところ、契約先のプロダクションから約2460万円の請求を
された事案で、裁判所は支払う必要はないという判決を下しました。

まず、「AV出演拒否」 違約金請求棄却の方から紹介します。

この判決は新聞各紙で記事になったのですが、各紙とも簡略な記載のため事案の
深刻性と判決の論理内容がわかりにくくなっています。
そこで今回は私のメルマガで取り上げることにしました。

本件の詳細はこの事件の女性側代理人の伊藤和子弁護士のブログ

http://worldhumanrights.cocolog-nifty.com/blog/

が詳細に事情の説明をしています。

また、伊藤弁護士の所属事務所のHPに本件判決がPDFで掲載されています。

http://mimosaforestlawoffice.com/documents/20151002_hanketsubun.pdf

なお、私が確認した限りでは伊藤弁護士のブログ及びHPしか情報がありません
でした。

AV出演というと、それなりの覚悟があってのことだろう、そういうことは慣れ
ているのだろう、と思われる方もいるかもしれませんが、私が
メルマガで取り上げる事案ですから、もうしばらくお読みください。

…どんな事案だったのか…

被告AV出演拒否の女性は、高校生当時、地元の駅の改札前でスカウトされ、
原告のプロダクションのタレントになった。女子高校生だった彼女は普通の
タレントになるつもりで、ポルノ的なことは考えていなかった。

その後、プロダクションは、その女性(未成年)との間で彼女がマネジメント
業務に協力しない場合には違約金が発生するという内容の「営業委託契約」
を締結した。

伊藤弁護士のブログには…

「契約書の内容は難しくて未成年の女性には理解できなかったが、プロダク
ションからろくな説明もなく親権者の同意もないまま、女性はサイン、
最後まで契約書のコピーももらえなかった。」

…という説明がなされています。

通常のビジネスに係わる方ですら契約書の意味を把握しにくいことが普通です。
彼女が契約書の意味を理解できなかったとしても不思議はありません。

その後、プロダクションは女性に無断で仕事を入れ、女性が辞めたいと言っても
「契約した以上従う義務がある」
「辞めれば100万円の違約金が発生する」
「撮影に来なければ親に連絡する」
等と脅され、出演を強要されたそうです。
そのうえ、未成年時はすべての報酬はプロダクションがとり、本人には一円も
支払わなかったとのことです。 以上は未成年時代のことです。

さて、女性が20歳になったら、プロダクションは、女性に断りなくアダルト
ビデオへの出演を決定し、無理に出演させたということです。
この出演の際の状況についても伊藤弁護士のブログには詳細に状況の説明が
なされていますので、詳しくはそちらをお読みいただきたいのですが、
このメルマガでは以下を指摘させていただきます。

… … …

・女性はこの時も、何度となくやめてほしいと述べたものの、指示に従わ
なければ違約金を支払うしかないと脅され、1本のAV撮影を強要された。

・女性は、この撮影の1日目が終わった直後に2回目の契約書への署名捺印を
させられた。

・女性はこの撮影後、アダルトビデオはやめさせてほしい、と頼んだが、
プロダクションは既にあと9本のアダルトビデオの撮影が決まっている、
と告げ、「違約金は1000万円にのぼる」「9本撮影しないとやめられ
ない」と脅迫した。

・民間の支援団体に相談に駆け込み、そのアドバイスにより、契約を解除する
と通告した。

・これに対し、プロダクションは脅したり実力を使い、さらに強要しようと
したが、強要できないとわかると、金2400万円以上の違約金を求め、提訴した。

以上が本件の事案のようです。

…裁判で原告プロダクションが請求した内容…

原告のプロダクションは裁判で2460万円もの大金を請求しました。
金額も驚愕ですが、その根拠も驚愕です。

・被告女性は約束していた9作品への出演を断ったが、1作品について220万円を
得ることができたはずだから、本来得られたであろう利益として合計1980万円
を請求する。

内訳は以下のとおりです。

プロダクションは制作会社との間で女性を出演させることにより1作品300万円の
売り上げを得ることになっていて、女性には出演料としてその中から80万円を
支払い、その残額220万円をプロダクションの取り分にすることになっていた。
しかし、女性が出演しなくなったので、220万円の9本分の利益が得られなく
なった。その9本分が1980万円という主張です。

・その他として、撮影キャンセルの損害が80万円、売込経費が400万円という
主張だったそうです。

…裁判所はどのような理由で請求を否定したのか…

伊藤弁護士のブログ及びHP掲載の判決PDFによりますと、裁判所の判決のポイ
ントは以下となります。

・女性がプロダクションと合意した契約は、「原告が所属タレントないし
所属AV女優として被告を抱え、原告の指示のもとに原告が決めたアダルト
ビデオ等に出演させることを内容とする『雇用類似の契約』であった。」。

※雇用契約となると民法の雇用および労働関係の法律が適用され、
契約については、「やむを得ない事由」(民法628条)があれば
即時解除することが出来ることになる。

・判決はアダルトビデオ出演という業務について、「アダルトビデオへの出演は、
原告が指定する男性と性行為等をすることを内容とするものであるから、
出演者である被告の意に反してこれに従事させることが許されない性質のもの
といえる。」 と判示した。

・結論として、「原告は、被告の意に反するにもかかわらず、被告のアダルト
ビデオへの出演を決定し、被告に対し、第2次契約に基づき、金1000万円という
莫大な違約金がかかることを告げて、アダルトビデオの撮影に従事させようと
した。したがって、被告には、このような原告との間の第2次契約を解除する
『やむを得ない事由』があったといえる。」

このような論理で、裁判所は女性が契約解除を通告したので、それ以降、
いかなる債務も負わないことになり、プロダクションにお金を支払う義務はない
という判断したとのことです。

…・…・…・…

本件訴訟について裁判所は記録全部の閲覧謄写制限をしたそうです。
女性のプライバシー保護の観点からは大変良いことです。

私のコメントですが、読者の中には、裁判所が本件合意を「雇用類似の契約」と
判断したことについて違和感を覚える方もいるかもしれません。
しかし、本件事案を公序良俗違反とか権利濫用という一般条項で解決してしまう
と救済されるのは本件事案だけということになります。
しかも公序良俗違反・権利濫用(一般条項)は例外的に認められるものですから、
類似事案に同じ救済ができるかどうかは「わからない」ということになってしま
います。

これに対し、本件判決は「雇用類似の契約」という考え方をしたので、同種事案
に対して民法628条の「やむを得ない事由」があるかを検討することができて
救済範囲が拡大します。
だからこそ裁判所は本件AV出演契約を「雇用類似の契約」であると判示したの
だろうと思います。

つまり、裁判所はあるべき正義の姿を考えて、その正義を実現するための
法的構成と理由を考えます。
そして、雇用類似の契約ということにすれば民法の雇用の規定の中の「やむを得
ない事由」による契約解除(民法628条)を使うことができて、それにより本
件だけでなく類似事案に対しても法的に契約解除を導くことができると考えたの
だろうと思います。

この判決は合議制(裁判官3名で担当する事件のこと)で出された判決ですが、
裁判長は原克也裁判官です。

そこでこの原克也裁判官の経歴を調べますと、平成3年から裁判官となり、司法
研修所教官も勤め、現在は東京地裁の部総括判事です(東京地裁に多数ある民事部の中の
1つの部を総括する裁判官という意味です)。

この判決は事案から考えて当然の判決ですが、裁判所が正しい判断を下して正義
を実現した判決というべきです。

他方で、私が「そんなことがあるか?」と本心でビックリした判決が、
一番最初にご紹介した「元アイドル交際禁止条項違反で賠償金」の判決です。

これについては、次回第5号でご説明しますので、次回もよろしくお願いいたし
ます。

今月もお読みいただきありがとうございました。

 

吉田 良夫

 

[第3号] 生き延びてきたホモ・サピエンスと言葉の力

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吉田良夫メールマガジン [第3号]
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今月のメルマガ              2015年9月
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【1】生き延びてきたホモ・サピエンスと言葉の力
【2】法律コラム ~交渉ノウハウ~
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【1】生き延びてきたホモ・サピエンスと言葉の力
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こんにちは。メルマガ第3号です。

前回はテレビ体操をご紹介しましたが、今回も私が感銘を受けたテレビ番組
のことを紹介したいと思います。

それは7月29日に放送されたNHKアーカイブスの「地球大進化 第3回
ヒトへと通じる道」です。

ここでは地球が星の衝突により形成されたという話や地球全体の超高温時代、
地球全てが分厚い氷に覆われた全球凍結(スノーボールアース)時代の
説明などがあり、それはそれで非常に面白かったのですが、私が一番
関心を持ったのは、人類といわれる種族が20数種類も存在し、そのなかで
唯一生き残ったのが我々ホモ・サピエンスだというお話です。

最初の人類は、植物の根を食べる草食種族と他の生き物を捕らえて食べる
種族に分かれ、前者が滅び後者の肉食狩猟の種族が生き残ったとのことでした。

そして肉食の種族の脳が大きく進化し、北京原人とかジャワ原人とかも
ありましたが、最後に残った種族がネアンデルタールとホモ・サピエンスの
2つで、両者とも脳の大きさは同じでした。
ネアンデルタール人はホモ・サピエンスと肉体的能力はほぼ同じで、相当に
がっちりとした体つきで氷河期のヨーロッパ地区で優秀な狩猟ハンター
として生活し、しかも埋葬などの習慣もあったようで精神的な部分での発達
もあったようです。

ところが、番組では専門家の解説を交えながら、ネアンデルタール人はの
どの構造から母音を発語することができず、そのため複雑な言葉を使うこと
ができなかったという見解を紹介しています。

他方で、ホモ・サピエンス(現在の我々のことではありますが)は、
十分な母音の発音が可能だったので複雑な発語が可能で、しかも
遺伝子分析の結果として脳の中で言語能力を扱う部分が存在していたという
説明もありました。
なお、ネアンデルタール人の遺伝子分析ではその言語能力の遺伝子はなかった
そうです。

そして、当初アフリカで生活していたホモ・サピエンスはネアンデルタール人
が生活していたヨーロッパ地区に進出し、ついにネアンデルタール人は絶滅し、
人類で生き残ったのはホモ・サピエンスだけになった、というわけです。

番組では、ホモ・サピエンスは言葉によって自分たちの経験を次の世代に伝え、
さらには言葉によって狩猟の予想すらできるようになり、厳しい氷河期を生き
延びることができたという説明がありました。言葉がいかに大切な役割を
果たしているか、それはそのまま現在の我々にも当てはまります。

人類は昔から言葉の力とともに進化向上し生き延びてきた、それは現代社会の
我々も同様です。
我々は言葉により複雑なコミュニケーションをすることができます。

さらには「言霊(ことだま)」という言葉があるように、言葉が知らず知らず
のうちに脳の潜在意識領域に情報を送り込み、それにより各人の潜在意識が
力強いもの・良いものになり、逆に弱々しいもの・悪しきものにもなります。

言葉は各人の人生を大きく左右するものなのです。

まさに言葉が種族を生き残らせ、人生を大きくも小さくも、強くにも弱くにも
変えてしまうといった、言葉の絶大な力を再認識することのできた、
興味深い番組でありました。

皆様はどう思われますでしょうか?

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【2】法律コラム ~交渉ノウハウ~
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■

今回はビジネスにも役立つ交渉ノウハウについて皆様と一緒に考えてみたいと
思います。
最初に大事なことは、交渉は交流(仲間づきあい)ではない、ということです。
以下、私なりの視点で交渉ノウハウを整理してみました。

(1)事実と意見(主張)の峻別
└────────────────
事実と意見(主張)を厳密に区別することは非常に重要です。意見(主張)は
事実とは別の概念であり、相手が交渉の結果として希望する内容にすぎません。
また、交渉においてどんな交渉結果を希望することも相手の自由です。

そこで、いちいち相手の意見(主張)に対し感情的になると相手の術中に
はまってしまい、自分にとっての合理的な結論が見えなくなるおそれがあります。

特に感情的になってしまうとその判断が難しくなります。
そこで、交渉では、いちいち相手の意見(主張)に振り回されず、自分の意見
(主張)を説得的にする事実を探し出し、その事実を交渉の場面で効果的に
相手に示すことを考えるべきです。

(2)事実の発見法
└────────────────
自分の意見(主張)を裏付ける有益な事実はなかなか見つからないかもしれません。
そういうときは以下の視点で整理してください。

① 紛争の経緯を時系列で整理する。
② キーマンの言動を時系列で整理する。
③ お金の流れを時系列で整理する。
④ 誰かが嘘を言っていないかという視点で分析する。
⑤ 誰かが誤解していないかという視点で分析する。
⑥ 自分が知っている事実は全体の中の一部分の事実にすぎないのではないか
という視点で分析する。
⑦ まだ重要な事実が存在しているのではないかという視点で分析する。

(3)相手の主張を客観的に分析する
└────────────────
交渉では相手の主張は単に相手の意見にすぎないのですから、相手の意見を
相手の客観的な利害状況を前提にして合理的に分析することが大事です。

そうすると、相手の主張が単なる「おどし・はったり」にすぎないのか、
相手が決意を固めて譲歩の意思がない状況なのか、といった微妙な相手の
心理状態も読み取りやすくなります。

相手の真意を探るという姿勢は交渉において、とても大事なことです。

(4)感情的にならない
└────────────────
重要なことです。しかし、意外と難しいことです。
自分の感情を制御して交渉し続けることができれば大抵の場合、その交渉は
大崩れしないで結果的に実りあるものになります。

(5)相手のストーリーを分析し予想する
└────────────────
自分の立場、相手の立場の双方をできるだけ客観的に分析し、相手の立場に
たって、相手のストーリーを考えるという姿勢はとても有効な交渉技術です。

ところで、ここで大事なことは、自分の感覚・常識・世界観をものさしにして
交渉すると交渉は混乱し失敗する可能性が高まります。
他方で、相手の感覚・常識・世界観をものさしにして、そのうえで自分が
目標とする交渉結果を目指して交渉すると、よい結果を得る可能性が
高まります。

自分の立場と相手の立場を客観的に分析して、「相手はどの程度なら受諾
できるのか」という問題意識をもつことも交渉の際の大事なポイントです。

(6)相手を分析する
└────────────────
例えば、身なりがまともで、自己紹介と名刺交換がスムーズに行え、
目つきと口調に違和感がなければ、その交渉相手は合理的な計算のできる
タイプである可能性があります。
そのような相手であれば、こちらが示すシグナルを察知して、双方にとって
合理的な妥協点を見出すための協議を進めることができるかもしれません。

他方で、目つきがキョロキョロし、小声・早口で、そわそわしている
様子ならば、心にやましいものをもっている可能性があります。
また、目つきが険しく、口調が攻撃的でとげとげしく、自己主張ばかりならば、
癇癪的な激情家かもしれません。相手の分析は重要です。

(7)威圧方式は交渉には有害無益
└────────────────
いうまでもないことです。威圧方式では交渉はうまくいきません。

(8)文字による整理
└────────────────
相手の主張も自分の主張もその内容と根拠を文字にして整理することは
非常に重要です。人間は文字で思考が整理されます。
また、気持ちが落ち着き、冷静さをとりもどすきっかけになります。

(9)信頼関係と共感の重要性
└────────────────
交渉では相手との信頼関係は不可欠です。相手から「敵側であるが、
あの者の言うことは信用できる。」というような信頼を得ることが
交渉成功の秘訣です。

その意味で、交渉は相互の客観的状況を冷静に理解したうえで、
互いに信頼を寄せ合うことが可能になり、相互に共感を覚えるような
状態になって合意に至ることができると考えた方がいいかもしれません。
少なくとも私はその方針で考えています。

お読みいただき、大変ありがとうございました。
今度ともよろしくお願いいたします。

吉田 良夫

 

[第2号] ぜひ推薦したいテレビ番組

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吉田良夫メールマガジン [第2号]
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今月のメルマガ              2015年8月
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【1】ぜひ推薦したいテレビ番組
【2】法律コラム~判例は変わる
「サッカーボール訴訟」
・事案の概要と問題の前提事情
・最高裁判決の理由部分
【3】夏季休暇のお知らせ
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【1】ぜひ推薦したいテレビ番組
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皆様

こんにちは。メルマガ第2号です。

今回は、まず、私がぜひ推薦したいと思っているテレビ番組について
お知らせしたいと思います。どんなテレビ番組かというと、
早朝に放送されている「テレビ体操」です。

たった10分だけですが、毎日、5人の女性のインストラクターが
「みんなの体操」と「ラジオ体操」を中心に、日替わりで、心地よい
ピアノ伴奏付きで、私にいろいろな運動をさせてくれます。

もう結構の期間、継続的にやっています。
もちろん朝寝坊の私は録画して自分のできる時間帯にやるだけです。
そしてときどきサボります。
それでも習慣化しております。
友人から教えてもらい、録画しはじめてやり始めたのですが、
よい情報をもらったと本心で感謝しています。

この効用は、まず朝の気分がとてもすっきりします。
また、全身のストレッチと軽度の有酸素運動で寝ているときの
副交感神経から積極的行動のための交感神経への切り替えがスムーズに
できるような気がします。そのためか元気が出ます。
ですから、私も皆様にもご報告です。
ご興味があれば是非ご覧ください。

ちなみに、私はテレビ体操と前後して、天風先生が教えてくださった
呼吸操練、統一式運動法、積極体操の三点セットもやっています。

せっかくですから、おそわった深呼吸のこともお知らせします。

深呼吸は息を吐ききってから新しい空気を深く長く強く吸うのが
コツのようです。息を吐いてからでないと肺に新鮮な空気が十分に
入ってこないからです。

これも皆様へのご報告です。

■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【2】法律コラム~判例は変わる
……  身近に起こりうる事例より ……
「サッカーボール訴訟」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■

裁判所の判断はその時点の社会情勢を考えながら正義の実現のために
変化します。

ですから従来の判例からすれば主張が認められないという場合でも、
その主張に十分な合理性があれば、裁判所を動かすことができる場合が
あります。

そのような一例として、最近の最高裁判例を簡単にご紹介します。

いわゆる「サッカーボール訴訟」として、広くニュースでも取り上げ
られた事件ですので、ご存知の方も多いと思います。

【事件番号】 最高裁判所平成24年(受)1948号
【裁判年月日】 平成27年4月9日
【法廷名】 最高裁判所第一小法廷

………………………………………………
■事案の概要と問題の前提事情
………………………………………………

当時11歳の少年が、放課後、児童らのために解放されていた小学校の校庭で、
使用可能な状態で解放されていたサッカーゴールに向けてフリーキックの
練習をしていたところ、そのサッカーボールが校庭から門扉の上を越えて
道路に出て、折から自動二輪車を運転していた被害者が道路上のボールを
避けようとして転倒し足を骨折し、入院中に認知症などの症状が出て
約1年半後に誤嚥性肺炎で死亡しました。

そこで、被害者遺族が、(少年は11歳のため責任はありませんから、)
その親に対し民法714条1項の監督義務者としての責任(損害賠償責任)を
請求したという事案です。

ここで説明しておかなければならないことは、
この最高裁判決がでるまでは、判例通説は本件のような日常の普通の
行為により起きてしまった事故のときも、子どもが罪を犯した場合も、
両者を区別しないでどちらのケースでも保護者(親)に監督義務者としての
民事責任を無条件で認めておりました。

つまり、裁判所は、親が監督義務者としての義務を怠らなかったということを
立証すれば責任を負わないといいながら、実際はその立証を認めないで、
無過失責任のように民事責任を認めていたわけです。

ですから、遺族側は当然に少年の親の損害賠償責任が認められると思った
はずです。そして、遺族側は約5000万円の請求を求め、1審は親に約1500万円の
責任を認め、2審(大阪高裁)も約1180万円の責任を認めています。

しかし、最高裁は、以下の理由で2審を破棄して、責任を全て否定しました
(つまり被害者側は賠償を得ることができないという結論になりました)。

これはこれまでの親の無過失責任のような広範な責任を限定するもので、
実務的には大きな判例です。

なお、遺族側は親だけでなく学校(地方公共団体)も被告にすることが
できた事案のようです(すでに時効が完成しているので学校=地方公共団体への
請求はできません)。

しかし、遺族側は親だけを被告にしました。
これまでの判例から親への請求が否定されるはずがないと思ったとしても
無理のない状況でした。しかし、新判例がでて親の責任はないということに
なったわけです。

親の法的責任は最高裁で否定されたわけですが、親子の精神的な苦悩は
大変なものだったようです。
他方で、遺族は1審2審である程度請求が認められたにもかかわらず最高裁で
全て否定されてしまい、さぞや無念であったと思います。

まさに判例が変わるときに起きてしまう悲劇です。

………………………………………………
■最高裁判決の理由部分
………………………………………………

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=85032
判決全文をお読みになりたい方は、上記URLをクリックしてPDFでお読みください。

┌▼─

│責任能力のない未成年者の親権者は、その直接的な監視下にない子の
│行動について、人身に危険が及ばないよう注意して行動するよう日頃から
│指導監督する義務があると解されるが、本件ゴールにむけたフリーキックの
│練習は、上記各事実に照らすと、通常は人身に危険が及ぶような行為で
│あるとはいえない。

│また、親権者の直接的な監視下にない子の行動についての日頃の指導監督は、
│ある程度一般的なものとならざるを得ないから、通常は人身に危険が及ぶものとは
│みられない行為によってたまたま人身に損害を生じさせた場合は、
│当該行為について具体的に予見可能であるなど特別の事情が認められない限り、
│子に対する監督義務を尽くしていなかったとすべきではない。

│C(補注:サッカーボールを蹴った少年のことです)の父母である上告人らは、
│危険な行為に及ばないよう日頃からCに通常のしつけをしていたというのであり、
│Cの本件における行為について具体的に予見可能であったなどの特別の事情が
│あったこともうかがわれない。
│そうすると、本件の事実関係に照らせば、上告人らは(補注:親のことです)、
│民法714条1項の監督義務者としての義務を怠らなかったというべきである。

└▲─

■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【3】 夏季休暇のお知らせ
< 8月12日(水)~16日(日)>
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■

メルマガ1号でもお知らせいたしましたが、今年は
8月12日(水)から16日(日)まで夏季休暇をいただく予定です。
8月17日(月)から通常通りの業務となります。

なお、お時間がありましたら以下もご参照ください。
私の活動状況などを記載しております。
http://torikai.us11.list-manage1.com/track/click?u=9b78c20553f238da5c697d1d4&id=3c202f6c3f&e=cef65c7d3c

お読みいただき、大変ありがとうございました。
今度ともよろしくお願いいたします。

 

吉田 良夫

 

[創刊号] 中村天風先生のお話

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今月のメルマガ              2015年7月
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【1】中村天風先生のお話
【2】法律コラム~契約と契約書の関係
【3】今年に入ってからの雑誌論文ご紹介と配信のお知らせ
【4】夏季休暇その他お知らせ
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■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【1】中村天風先生のお話
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■

皆様
こんにちは。

今回は第一号と言うことで、私が敬愛している中村天風先生の
講話の中に出てくる古代神話をご紹介したいと思います。

:::::::::::::::::::::

むかし、悪魔がある町にあらわれて、

「今日からおまえたちのものをすべて俺がうばいとることにする。
しかし悪魔にも情けはある。たった一つだけ、
おまえたちが残しておいてほしいものだけは見逃してやる。
明日までに残しておいてほしいものを一つだけ書き出せ。
それ以外のものは一切、俺が奪い去るからな」

と言い残して、悪魔がひとまず立ち去った。
さあ、町の人はてんやわんやの大騒ぎ。

「私はお金だ」

「俺は食いもの」

「私は、家だ」

「いや、私は名誉だ」

「私は宝石よ」

とそれぞれいろいろなものを書き出した。
あなた方だったらどうする。なにを書きますか?
悪魔はたった一つだけしか見逃してくれないんだぜ。

さてさて、一夜明けてみると、その町にはなんと、
たった一人の人間だけしかいなくなっていたとさ。

もうわかったね。金だ、家屋敷だ、やれ宝石だ、やれ何だと
書き出した人々は、最も肝心な「命」を忘れていたんだね。
たった一人だけが「命」と書いていたので生き残ったというお話しです。

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これは「君に成功を贈る」244頁(述者 中村天風 日本経営合理化
協会出版局 2001年)に書いてあるお話です。

お金、食べ物、家屋敷、名誉、財産などは確かに人生で非常に
価値高いものではありますが、命が一番大切です。

ですが、その大事な命のことをついつい忘れがちになる、という
お話しであります。

これは皆様にご紹介しながら、実は自分自身に言い聞かせるための
お話しではありますが、普段意識していないけれども、
とても大事なものがある、ということでご紹介いたしました。

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【2】法律コラム~契約と契約書の関係
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私たちは仕事でも私生活でもいたるところで契約をしていますよね。
そして契約書に判子を押したり、最近ではネットで承諾欄をクリックして
契約書を成立させています。

では契約と契約書はどこが違うのでしょうか。

契約は当事者が約束(合意)をすることで当事者間を拘束し合うものです。
そして契約書は契約をしたことの証拠として形にするものです。

契約書を考えるときは、そもそも約束の内容(合意した契約の内容)は
何か、その約束内容が読めばわかるようになっているかを、確認する
ことになります。

つまり契約書チェックでは同意の内容は何か、たとえ合意内容が
不利であって少しでも不利を少なくする(より有利にする)交渉の
やり方はあるか、という検討が一番大事になります。

私が日頃よく行っている契約書チェックの時も、大事な合意内容の
交渉事情を教えていただければ、よい交渉アドバイスができる場合が
あるかもしれません。

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【3】今年に入ってからの雑誌論文その他のご紹介
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①戦略経営者(株式会社TKC) 2015年1月号
「120年ぶりの全面改正となる債権法の中身」
②TKC会報(TKC全国会) 2015年5月号
「民法改正と企業実務への影響」
③戦略経営者(株式会社TKC) 2015年7月号
「Q&A経営相談
今年施行の改正会社法のポイントとは」
④会社法務A2Z(第一法規) 2015年7月号
「失敗しないための事業承継術」

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債権法改正は120年ぶりの大改正で契約の基本に関する改正ですから
影響度は小さくありません。平成30年施行予定ですが、この
メルマガでも情報の配信をさせていただければと考えています。

そこで、
私の①②③についてはご希望の方にPDFで記事を配信します。
ご希望の方は第1号メルマガ配信日から1週間程度の期間内に、
このメルマガアドレスに、「雑誌論文希望」とお書きいただき、
返信してください。
(※私の混乱防止のため業務用アドレスには
配信希望メールを送信しないでください。)

なお、具体的な配信時期はあまり遅くならないようにしますが、
なにぶん初めての試みなので配信日のお問い合わせはご容赦ください。

また④の雑誌論文は事業承継をテーマにしています。
事業承継については、2008年にTKC出版から「弁護士が書いた
失敗しない経営承継」を出版し、またこのテーマでセミナー講演も
しておりますが、このたび会社法務A2Zで「失敗しないための
事業承継術」として、相続や会社法諸制度の活用についてアップデート
して約7000字で整理しました。
この小論文は今回、配信をいたしませんので、何卒よろしくお願いいたします。

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【4】夏期休暇その他お知らせ
≪2015年8月12日(木)~16日(日)≫
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本年は8月12日(木)から16日(日)まで夏期休暇をいただく予定です。
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また事務所にいるときは13時~14時の間に昼食をとることが多く、
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そのため13時になってからお電話をいただいても不在のことが多くなります。
会社では13時から午後の仕事が始まるのが普通ですから、今まで
ご迷惑をおかけしてきました。
今回、ようやくお客様にこの時間サイクルをお伝えすることができます。
どうかよろしくお願いいたします。