【第40号】近江商人十訓とお得意様の仕入係~私が大事にしたいこと~

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 今月のメルマガ              2019年2月
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 ◆近江商人十訓とお得意様の仕入係
   ~私が大事にしたいこと~

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皆様

お元気でお過ごしでしょうか。
最近は三寒四温ですが、まちがいなく春が近づいています。
春の到来が楽しみです。

ところで今月は私の勉強のために近江商人十訓をご紹介させてください。
(私自身が肝に銘じるためのものです)

これは「売り手よし・買い手よし・世間よし」の
「三方良し」のことではありません。
以下の十訓といわれています。

1.商売は世のため、人のための奉仕にして、利益はその当然の報酬なり。

2.店の大小よりも場所の良否、場所の良否よりも品の如何。

3.売る前のお世辞より売った後の奉仕、これこそ永遠の客をつくる。

4.資金の少なきを憂うなかれ、信用の足らざるを憂うべし。

5.無理に売るな、客の好むものも売るな、客の為になるものを売れ。

6.良きものを売るは善なり、良き品を広告して多く売ることはさらに善なり。

7.紙一枚でも景品はお客を喜ばせる、つけてあげるもののないとき笑顔を景品にせよ。

8.正札を守れ、値引きは却って気持ちを悪くするくらいが落ちだ。

9.今日の損益を常に考えよ、今日の損益を明らかにしないでは、寝につかぬ習慣にせよ。

10.商売には好況、不況はない、いずれにしても儲けねばならぬ。

この十訓のなかで、私の一番好きなフレーズは
「5.無理に売るな、客の好むものも売るな、客の為になるものを売れ。」
です。

客の好むものも売るな、というのは逆説表現です。
客のためにならない物を客が買おうとすることはよくあります。
そういうときは、客のためにならないから売りませんよ、
という意味だと思います。

ところで、松下幸之助さんの「成功の金言365 第163頁」に
「お得意様の仕入係」というタイトルで以下のことが書いてありました。
少し長いのですが、私がとても好きなところなので、引用させてください。

………

商売をするには、自分の扱う商品を十分吟味し、自信をもって
販売することが大事であることはいうまでもないでしょう。
ただその際の心がけとして、単に商品を吟味するというのではなく、
買う人の身になってというか、いわばお得意様の仕入係に
なったつもりでこれを吟味することが大事だと思います。

…中略…

だから、自分はお得意様の仕入係だと考えれば、
お得意様は今何を必要とされているか、どういう程度のものを
どれほど欲しておられるかということを察知しつつ、
そういう目で商品を吟味して、お得意様の意にかなうように
お勧めしなければなりません。

ちょうど奥さんが、晩のオカズを買いに来て魚屋さんの店先で
あれこれ物色しているうちに、魚屋の主人が、
その奥さんの要望を察しつつ、
「奥さん、これはどうです。この魚は今が食べごろ、
値段も手ごろ、ご主人にもきっと喜ばれますよ」
という具合に相手の好みにピタッと相応ずる品を選んで勧めれば、
いっぺんに決まってしまう。
奥さんも気持ちよく買い物ができるし、店も繁盛するというわけです。
魚屋さんに限らず、ほかのお店も、これは同じことではないでしょうか。

………

魚屋さんの店先の様子を想像してみます。

店先にはいろんな魚が所狭しと並んでいます。
値段はピンからキリまで。
でも、お客さんは「今日は何にしようかしら」と迷っています。
魚屋の主人はお客さんの財布と好みを知っています。
だったら魚屋の主人がお客さんに提案です。

どんなふうに提案するのでしょうか。

値段はお客さんにとって、「高すぎず・安すぎず・手頃な値段」か、
モノはお客さんにとって「高級すぎず、逆でもなく、手頃な品」か、
量はお客さんにとって「多すぎず、少なすぎず、手頃な量」か
奥さんに「料理法」をアドバイスした方がいいと思ったら、ちゃんと料理法まで提案しているか
奥さんの家族にとって楽しい夕食になると信じるものを提供しているか

奥さんは喜んで買うことでしょう。
そして、おいしくて楽しい家族の夕食ができあがりです。

これは、近江商人十訓の
「無理に売るな、客の好むものも売るな、客の為になるものを売れ。」
を幸之助さん流の言い方で教えてくれたものだと思います。

私は肝に銘じることにいたします。

ここまでお読みいただいた皆様に深く感謝します。

吉田良夫