【第41号】横井也有の「健康十訓」から考えたこと~江戸時代の先人の生活アドバイス~

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 今月のメルマガ              2019年4月
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 ◆横井也有の「健康十訓」から考えたこと
 ~江戸時代の先人の生活アドバイス~

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皆様

あっという間に桜の季節になりました。
私の事務所の前にも「江戸彼岸」という大きな桜の木があります。
そして、見事に彼岸の日前後に桜が開花しました。
ちょうど、そばの名店「まつや」の目の前ですから、
多くの方が「まつや」を背景にして桜の木を写真撮影しています。
もし近くをお通りの際は、ちょっと足を伸ばして
「江戸彼岸」の桜をお楽しみください。

ところで、先日、中村天風財団の月刊誌を読んでいたら
「健康十訓」
という言葉に巡り会いました。
これは天風会の講師である服部嘉夫先生の「長寿と健康」
という論文の中の一節にあった言葉です。
興味をもったのでネットで少し調べました。

この十訓は、江戸中期の俳人である横井也有の作でした。
この方はさすがに長寿で西暦1702(生)-1782(没)とありました。

江戸時代の寿命は統計がないので正確なことはわからないようですが、
幼少期を無事に過ごしても、30~40年くらいの寿命の方が
多かったようです。

ちなみに、江戸幕府安泰のために健康維持と長寿に最大限の気を
遣っていたはずの徳川将軍家ですら、以下のとおりです。

家康公75才、2代 秀忠54才、3代 家光48才、4代 家綱40 才、
5代綱吉64才、6代 家宣51才、7代 家継8才、8代 吉宗68才、
9代 家重51才、10代 家治50才、11代 家斉69才、12代 家慶61才、
13代 家定35才、14代 家茂21才、15代 慶喜77才

これをみると、俳人横井也有の人生80年はまさに長寿ですね。

そこで「健康十訓」をみてみましょう。
なお、「健康十訓」の表記は何タイプか存在し、
どれがオリジナルなのかわかりませんでした。
そのため、このメルマガでは、「weblio辞書」の表記を前提にします。
https://yoshida-law.us11.list-manage.com/track/click?u=9b78c20553f238da5c697d1d4&id=7969f70a45&e=195a2b61c0

1.少肉多菜
2.少塩多酢
3.少糖多果
4.少食多歯
5.少衣多浴
6.少言多行
7.少欲多施
8.少憂多眠
9.少車多歩
10.少怒多笑 (weblio辞書以外は「少憤多笑」としています)

声に出して読んでみるとリズムがあって気分が良くなります。
さすが俳人の作です。
また「少」と「多」で対語になっているので覚えやすそうです。

1から4は食事のアドバイスですね。

1.少肉多菜
2.少塩多酢
3.少糖多果
4.少食多歯

少しビックリなのは、江戸中期で「肉を少なく」と書いていることです。
江戸中期には「肉の食べ過ぎ」にご注意といわれるくらい、
「肉」が食されていたのですね。
3番目の「少糖多果」も、ネットで江戸時代の病気を調べてみたら、
糖尿病は「消渇」という名前で知られていたそうです。
昔も今も食生活が大事だということは変わりないということですね。

5から10の6項目は日常生活のアドバイスです。

5.少衣多浴

これは、少しずつ薄着になれていくと寒さに対する皮膚抵抗力が
強くなるので、「冷えて風邪を引く」ことが少なくなるという
意味だと思います。

6.少言多行

普通の国語の読解では「口数少なく行動せよ」という意味に
なると思います。
しかし、私は、
「愚痴や文句を言わずにさっさと行動せよ」
という意味に受け止めました。
愚痴などは言い出せばきりがありませんし、
言っているうちにだんだんマイナス感情がエスカレートします。
いいことは何もありません。
愚痴などを言う暇があるなら気持ちを切り替えて行動せよ、
その方がはるかに健康によい、という意味に受け取りました。

7.少欲多施

これは欲望のコントロールの大事さを述べているように思いました。
欲望には、きりがありません。
欲望はコントロールしにくいものです。
だから自分以外の人のことを思いやり、実際に「行動」することを
「多施」と表現して、「多施」により欲望を多少なりとも
コントロールできること(無欲ではなく小欲)、
それが健康に大いに役立つ、ということを伝えているように思いました。

欲深き人間の業も「多施」により「少欲」になれる、
それにより幸せを感じることもできる、
そのような精神状態は健康と長寿をもたらす、

というような意味でしょうか。

8.少憂多眠

不眠はつらいものです。
不眠の時は寝たいと思っても寝付くことができません。
しかし、くよくよしないで明るい気持ちを心がけることで
(少憂)、安眠(多眠)を得やすくなります。
少なくとも寝付きは改善するはずです。

特に我々現代人には睡眠障害の傾向がありますが、
「少憂」は心がけ次第で実践できます。
「少憂」により「不眠」は少なくなり、「多眠」となり
健康につながるはずです。

9.少車多歩

この「車」というのは、自動車ではなく、人が2人で担ぐ「駕籠」のことですよね。
そういえば自動車のことを「駕籠(かご)」という人もいます。
今も昔も、車ばかり使うと足腰が弱くなる、という戒めは大事です。

10.少怒多笑(少憤多笑)

怒りや憤りといった感情は誰しも経験があります。
ですが、憤怒の感情の強い人は健康を害していることが多いように思います。

他方で、「笑い」はメルマガ16号(2016年12月号)でも
お伝えしていますが、すばらしいものです。

笑うだけでナチュラルキラー細胞(がん細胞を撃退する免疫細胞)が
活性化するという信じられない効用まであります。
まさに「笑う門には福来たる」です。
福とは健康を含む「幸福」のことです。

では、どうすれば憤怒の気持ちのときに「少怒(少憤)」になれるのでしょうか。
憤怒の情で笑う気持ちになれない時には、「笑う真似」をするだけでいいのです。
それだけで笑いの効用が生じます。

それに「笑いの真似」をしているうちに憤怒の念が消え去ります。
笑い(の真似)は心身に絶大なプラス効果があります。
そして、「多笑」により心身ともに健康になります。

この健康十訓はわずか40文字の漢字の集まりです。
それなのに、食事などの日常生活のこころがけ、
メンタルアドバイスといった様々なことが書かれています。
実に含蓄のある40文字です。

今回は「健康十訓」について私なりの考察をさせていただきました。
皆様はこの40文字をどのように受け止められたでしょうか。

ここまでお読みいただいた皆様に深く感謝します。

吉田良夫