「非上場・中小企業向け株主総会Q&A」ご提供について

非上場企業の株主総会で発生しやすい具体的問題Q&A

~非上場企業に特化した盲点や重要問題の解決集です~

このQ&Aは、吉田総合法律事務所の全員が作成に関わりました。
このQ&Aは、私吉田良夫が、日本商工倶楽部から非上場企業に特化した株主総会の講演を依頼され、その講演内容を検討したことが、最初の作業です。

非上場企業では非常に真面目で業績良好な企業であっても、複雑な法令の遵守の中で「意図しない裂け目」を作ってしまうこともあります。
特に本Q&Aの前提となった講演内容は、私が書籍で探した問題だけでなく、20年以上の会社法業務の中で、実際に「現実問題として直面した難問」もかなり含まれております。
調べてもドンピシャリの回答文献はありません。
その中で、なんとか依頼者(会社)の期待に応えようとして考えてきた内容も含まれております。

その後、講演内容を日本商工倶楽部機関誌でダイジェスト紹介をしていただき、その講演録をお読みいただいた方から、大変良い内容で学ぶことが多々あった、という望外の喜びとなるお電話まで頂くこともできました。

そのような事情がある中で、講演内容の音声データを日本商工倶楽部からいただき、当事務所事務局が一語一語の完全反訳(文字化作業)をしました。
また、講演時間が1時間30分という事情もあり、補強必要箇所もありましたので、星野光子弁護士による文献及び判例調査による補強作業も行われました。

さらに、渡邊康寛弁護士からは、Q&Aの形式が利用性が良い、という指摘があり、その通りですから、渡邊弁護士にその整理を依頼し、Q&A原稿の素地ができました。その後、当事務所内で内容討議などもあり、掲載原稿ができあがりました。
なお、この原稿は実際は2020年中にできておりましたが、コロナウイルスによる環境変化に対応するための事務所改革などもあり、ようやく掲載することができました。

この原稿の完成経緯は以上の通りですが、今後も、適宜、追加補充などの作業をしていきたいと考えております。

当事務所は所属メンバー全員が、「世の中に、実務に、少しでも貢献し、役に立ちたい」と強く思っております。このQ&Aが非上場企業に関わる方々に、少しでも役に立ちますことを念じ、本Q&Aを当事務所ホームページに掲載いたします。

2021年4月30日

吉田総合法律事務所       
代表弁護士 吉田良夫      
当事務所弁護士、事務局を代表して

 

 

日本の「脱・ハンコ文化」が動き出す

2020年8月5日 弁護士 吉田良夫

はじめに

新型コロナウィルス感染症が世界中で猛威を振るう中、日本のビジネスのあり方が急激に変化し始めました。
企業や組織のテレワーク(リモートワーク)の普及、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進など、新しい生活様式、ビジネス様式に進化し始める一方で、日本のデジタル化を遅らせる大きな要因の一つでもある「ハンコ」問題が顕在化しました。

これまでは、重要な契約や手続きの場において、書面に署名・押印は欠かせないものでした。また、見積書、請求書、領収書、稟議書、確認書などの事務作業上においても「書面に押印」という慣行が深く根付いていました。

しかし、2020年4月7日に新型コロナウィルス感染症感染拡大の重大局面を迎え、政府が発令した緊急事態宣言によって私たち日本国民は不要不急の外出を自粛せざるを得ない状況となりました。
ところが現実は、テレワークを推進したいのに、書面に押印するだけのために、感染リスクを感じながら出勤するといった不合理非効率が顕著になりました。
そこで、政府と経済団体は以下を公表し、「脱・ハンコ文化」に向けて始動しはじめました。

・2020年6月19日 内閣府 法務省 経済産業省 「押印についてのQ&A」
http://www.moj.go.jp/content/001322410.pdf

・2020年7月8日 内閣府 規制改革推進会議 四経済団体
「書面、押印、対面」を原則とした制度・慣行・意識の抜本的見直しに向け た共同宣言
https://www.keidanren.or.jp/policy/2020/061.pdf
https://www.keidanren.or.jp/policy/2020/061.html (一般社団法人 日本経済団体連合会HP)

・2020年7月17日 閣議決定 「経済財政運営と改革の基本方針2020」
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2020/2020_basicpolicies_ja.pdf

 

1.押印の効果は限定的

内閣府・法務省・経済産業省(以下では「政府」といいます。)は、6月19日、連名で、「押印についてのQ&A」(以下、「Q&A」といいます。)を公表しました。

Q&Aの最初の質問は、「問1 契約書に押印をしなくても、法律違反にならないか。」です。

その回答は以下のとおりです。

・私法上、契約は当事者の意思の合致により、成立するものであり、書面の作成及びその書面への押印は、特段の定めがある場合を除き、必要な要件とはされていない。
・特段の定めがある場合を除き、契約に当たり、押印をしなくても、契約の効力に影響は生じない。

 

そして、問2以下で、押印があるとどういう効果があるか、について民事訴訟法第228条4項をとりあげ解説しています。

民事訴訟法(文書の成立)
第228条
4 私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。

 

詳細は冒頭に指摘したURLから原文をお読みいただきたいのですが、これまでは、民事訴訟法第228条第4項の文言が、「私文書は、本人又は代理人の署名や押印があるときは、真正に成立したものと推定する。」となっていますから、契約後にトラブルになって、実は契約は成立していない、などと言われないために(裁判になってもしっかりと立証するために)、契約書などの書面が正しく成立したことを推定する手段として、事実上、押印を必須としてきました。

しかし政府は、前述のとおり、「契約は当事者の意思の合致により、成立する」、「特段の定めがある場合を除き、契約に当たり、押印をしなくても、契約の効力に影響は生じない。」と明言しました。

もしも、その契約書が正しく成立したかどうかが裁判で争いになった場合について、以下の回答をしています。

「他の方法によっても文書の真正な成立を立証することは可能であり(問6参照)、本人による押印がなければ立証できないものではない。」(問3 回答2項)

「本人による押印があったとしても万全というわけではない。そのため、テレワーク推進の観点からは、必ずしも本人による押印を得ることにこだわらず、不要な押印を省略したり、『重要な文書だからハンコが必要』と考える場合であっても押印以外の手段で代替したりすることが有意義である」(問3 回答4項)

つまり、政府は、証拠があればハンコ押印がなくても契約が正しく成立したことを立証できる、契約の際にハンコを必要とすべきではない、と述べています。

では、どのようなものが押印に代わってその文書成立の真正を証明する手段となり得るのでしょうか。本Q&Aの問6に詳しく記載されています。

① 継続的な取引関係がある場合には、「取引先とのメールのメールアドレス・本文及び日時等、送受信記録の保存」が証拠になります。
また、括弧書きで、(請求書、納品書、検収書、領収書、確認書等は、このような方法の保存のみでも、文書の成立の真正が認められる重要な一事情になり得る…。)とあります。

② 新規に取引関係に入る場合には以下が証拠になります。
・契約締結前段階での本人確認情報(氏名・住所等及びその根拠資料としての運転免許証など)の記録・保存
・本人確認情報の入手過程(郵送受付やメールでのPDF送付)の記録・保存
・文書や契約の成立過程(メールやSNS上のやり取り)の保存

③ 電子署名や電子認証サービスの活用
(利用時のログインID・日時や認証結果などを記録・保存できるサービスを含む)

 

本Q&Aは、「上記①と②については、文書の成立の真正が争われた場合であっても、下記の方法により、その立証が更に容易になり得る…。」とあります。

その下記の方法、とは以下のとおりです。

(a) メールにより契約を締結することを事前に合意した場合の当該合意の保存(b) PDFにパスワードを設定
(c) (b)のPDFをメールで送付する際、パスワードを携帯電話等の別経路で伝達
(d) 複数者宛のメール送信(担当者に加え、法務担当部長や取締役等の決裁権者を宛先に含める等)
(e) PDFを含む送信メールおよびその送受信記録の長期保存

 

2.「書面・押印・対面主義」からの脱却

日本独自文化による非効率不合理性が顕著になったことをうけて、
内閣府 規制改革推進会議 四経済団体は、2020年7月8日、
「『書面、押印、対面』を原則とした制度・慣行・意識の抜本的見直しに向けた共同宣言」を公表しました。

https://www.keidanren.or.jp/policy/2020/061.pdf
https://www.keidanren.or.jp/policy/2020/061.html (一般社団法人 日本経済団体連合会HP)

同宣言は、「2.民民間の取引における見直しについて (2)押印についての考え方の整理」において、以下のとおり記しています。

押印に関する民事基本法上の規定の意味や押印を廃止した場合の懸念点に応える整理(内閣府 法務省 経済産業省作成の「押印についてのQ&A」)に基づき、押印が必須でない旨を周知し、民間事業者による押印廃止の取組を推進する。

 

また2020年7月17日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2020」
の第3章「新たな日常の実現」の1(4)①においても、以下のとおり、「書面・押印・対面主義からの脱却等」について記しています。

書面・押印・対面主義からの脱却等

書面・押印・対面を前提とした我が国の制度・慣行を見直し、実際に足を運ばなくても手続できるリモート社会の実現に向けて取り組む。このため、全ての行政手続を対象に見直しを行い、原則として書面・押印・対面を不要とし、デジタルで完結できるよう見直す。また、押印についての法的な考え方の整理などを通じて、民民間の商慣行等についても、官民一体と なって改革を推進する。行政手続について、所管省庁が大胆にオンライン利用率を引き上げる目標を設定し、利用率向上に取り組み、目標に基づき進捗管理を行う。

 

3.まとめ

政府が「脱・ハンコ文化」に向けての具体的方針を公表したことにより、日本のデジタル化が大きく前進することは間違いありません。そして、今後もその流れは止まることはありません。

私たちが、今、行うべきことは、動き出したデジタル化の波に乗り遅れることのないよう、常に情報・情勢を見極め、それぞれの企業・組織に合ったビジネス様式を新たに構築していくことだと考えます。
我々は、大きな流れの変化をはっきりと理解し、従前の「書面・押印・対面主義」を見直し、業務生産性の向上に取り組むべきだと思います。

今回は日本文化ともいうべきハンコの押印について、流れが大きく変わりましたので、政府公表資料のご紹介とともに、皆様と確認する趣旨で本稿をご案内いたしました。

今後は急速に電子署名や電子認証サービスが浸透すると思われますので、日を改め、内容をご紹介したいと考えております。
 

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A・C(アフター・コロナ)時代のWEB会議の活用法

2020年7月15日 弁護士 吉田良夫

はじめに

現在、ビジネスを取り巻く環境が大きく変化し、ICT活用による仕事の効率化が求められています。
また、2020年の新型コロナウィルス感染症問題により、場所を問わずに仕事ができるテレワーク(リモートワーク)の必然性が急速に高まっています。

当事務所では、新型コロナウィルス感染症の感染拡大が取り沙汰されるよりも前に、遠方のお客様や体の不自由なお客様などがお困りの際に、いつでも安心してご相談いただけるような環境を整えておく必要があると思い、いち早くWEB会議システムを導入しておりました。

現在では、Microsoft Teams、Zoom、Skypeという3つのツールを駆使し、このシステムに所員全員が慣れるためにも毎日活用しています。その中で気が付いたこと、大切なポイントなどについて「A・C(アフター・コロナ)時代のWEB会議の活用法」として以下にまとめました。
この情報が、皆様の新しい生活様式の一つとしてお役にたてれば幸いです。

 

1.WEB会議システム導入の必要性について

実際のところ、これは私の長い弁護士活動において初めてのテーマです。
ただ、多くの人にとっても、やはりまだ馴染みのない、しかし覚えなくてはいけないテーマです。

テレワーク体制において、所員全員が「毎日顔を合わせて会議をする」ということはとても重要なことです。
メールや電話で繋がっていても、顔を合わせないコミュニケーションだけでは気持ちの伝達が難しく、伝わらないこともあります。
また、業務上においても所員同士が「今何をやっているか」「どこまで進んでいるか」などという状況の把握がお互いにできにくくなります。
そのため「テレワーク」という業務が始まってから、当事務所では毎日WEB会議を行うようにしています。毎日行うことで、システムに関する疑問点や改善点、注意点など、それなりに気がつくことがあります。

もしかすると中には、何らかの理由によりWEB会議システムを導入することができない、または不安があるという人もいるかもしれません。
しかし、急速に進むIT化の波に乗れずWEB会議システムを導入しなければ、進化の法則での「競争」、いわゆる変化についていけず、ビジネスの世界から消えてしまうスピードが速くなる可能性があります。

環境の変化に対応できたものが生き残る。
常に「強い者が勝つ」のではなく「勝ったものが強い」のです。

勝ち負けという風に言いかえることは、少し刺激的すぎるかもしれません。
しかし、やはり企業や組織、そして人間は、長く存続できた方がいいわけです。
まずは生き残る(生存の法則)。
その次にプラスアルファの部分を考えれば良いのです。
プラスアルファの部分とは、「業績を上げる」、「知名度が上がる」、「信用される」、「良い生活ができる」、「満足感がある」等です。
このプラスアルファの前に「生存」を考えなくてはいけません。
「生存」つまり生き残るために、WEB会議システムの導入は必要不可欠なのです。

 

2.WEB会議の活用術

どうせ使わなくてはいけないならWEB会議のメリットや活用の際のポイントを十分知った上で使いこなしましょう。
WEB会議をするためには、まずツール(道具)を上手に使うことが大切です。
戦いにおいても、古今東西「武器調達」が必要です。
しかし武器を調達するだけで勝てるわけではなく、その使用法が大事なのです。

皆様は、「戦略」・「戦術」・「戦法」、それぞれに局面が違うことをご存じでしょうか。
目の前の相手に対し「今どうやったら相手を倒せるか、勝てるか」というのは、「戦法」に該当します。
物事を大きく決めるのが「戦略」です。
「戦略」があり、次に「戦術」が決まり、「戦法」を立てる。
このwithコロナ、afterコロナの状況下において、WEB会議は「戦略」ということになります。

WEB会議も直接面談も、人間がコミュニケーションを行うためのツールです。
メールやチャットなど、デジタルで大量に情報交換することもコミュニケーションの一つです。
どのコミュニケーションツールも、いかにして相手の心に訴えるか、相手の心に「好感」や「感動」を与えるか、ビジネス的には「説得力」を与えるか、解ってもらうか、という点で共通しています。

<WEB会議のメリット>
ある方が、WEB会議におけるメリットを次のように挙げられていました。
・移動時間なく会議ができる
・自分のデスク、自分の城で落ち着いて会議ができ、自分の手持ち資料も容易に見ることができる
・迫力のある人との会議では、WEB会議の方が、相手の迫力が薄れて話がしやすい
・WEB会議の方が相手の顔をしっかり見ることができる

<WEB会議における第一印象の重要性>
第一印象は、深層心理にかなり影響があります。
「メラビアンの法則」では、目から得た情報が55%、耳から得た情報が38%、言葉から得た情報が7%であり、これらの情報に基づいて人の印象が決まるとされています。
つまり、その人のイメージが決まる第一印象は、見た目の情報で半分以上が決まるということになります。それにプラスして、優しく丁寧に惚れ惚れとする声でしゃべられると、大抵の人は「落ちる」、そういうものです。
見た目のイメージの重要性、「人は見た目が大事」の原則です。

WEB会議においては、それ専用のお化粧をする、またはそれ専用のお化粧の仕方に変えるという人もいるようです。
テレビでもテレビ映り用のお化粧、身支度をして撮影にのぞむのと同様、WEB会議もテレビ類似ですから、自分の顔の表情についての何らかの手当ということは、より比重が高まります。
これを「する」「しない」は人の判断ですが、「人は見た目が大事」という観点からその余地はありそうです。現時点でも、これをされている方は結構多いということです。

<WEB会議で最も重要な「話し方」>
WEB会議の中で、一番大事なことは「話し方」です。
そのために必要なツールとして、高機能のイヤホンマイクを用意すると良いでしょう。
周囲の雑音が入らないため相手が何を話しているかしっかり聞こえ、また自分の話していることもしっかりとクリアに相手に伝えることができます。
一番大事な作法は、お互いにイヤホンマイクを使い合うことです。
パソコンのマイク、それからカメラの音声ツールだけでは、周囲の雑音を拾うため本当に聞きたい音声が聞こえにくくなります。
実はこれは携帯電話で重要ミーティングをする際にも、ビジネスの確立されたテクニックであるといえます。
携帯電話でビジネスミーティングをする時はイヤホンマイクをつけ、雑音をなるべく少なくするように最大限努力し、新幹線の移動中に大事な会議はしないことです。

次に、話し方のポイントです。
ゆっくり喋る、はっきり発音する、ただし怒鳴らない、大声とは異なる、語尾をはっきり発音する。
これらを意識するとしないでは大違いです。特に日本語の特性で、終わり末尾で Yes・No が決まります。また、語尾をはっきり言うことで迫力が出ます。

次に語尾上げ、語尾下げ。
私は、語尾下げは「運が落ちる」語尾上げは「運が上がる」と思い込んでいます。
語尾を上げると、私の感覚ですが、消極感覚を相手に与えない。
語尾下げより語尾上げの方が聞きやすい。
カラ元気でいいので、元気を出して「自信あり」と自分を思い込ませると、結構元気になります。
誰が見たって、「自信なさそうな口調」vs「自信満々の口調」、どちらを採用するか、結論は明白です。

<有効なWEB会議の進め方>
WEB会議は長引く傾向があります。スタート時間になっても、「誰々が入ってこない」とか「設定に手間取る」とか10分遅れでスタートするのはザラにあります。
また、エンドの時間を決めておかないと長引く傾向にあります。
エンド時間を決め、スタートが遅れたら、予定エンド時間に開始遅れ時間の分をプラスするだけ。
「ここで今日は終わり」と決めておくことがWEB会議のコツの一つです。
また、会議進行の進行表・シナリオを事前に用意することも重要です。
これは「戦略」の次の「戦術」に該当し、「戦法」は前述いたしました、話し方のポイント(ゆっくり喋る、はっきり発音する、語尾上げ)などです。
つまり直接面談よりもWEB会議では、自分の中のシナリオの準備がどれだけできているかが重要です。

 

3、WEB会議ツール(ソフト)について

当事務所で使用しているweb会議ツールは以下の3つです。

・Skype 無料で汎用性あり
・Microsoft Teams(有償版)
・Zoom(無償版)(有償版)

Zoomについては、少し前までは脆弱性が指摘され、使用にリスクが伴うという評価もありましたが、現在の最新バージョンではその問題は解消され、かなり多くの企業や組織でZoomが利用されています。
以前のリスク評価の真の理由として、無償版についてのチャイニーズリスク、回線が中国経由という点にあったようですが、やはり便利ということと、最新バージョンはかなりセキュリティーが強く、他のソフトと比較しても劣らないという評価です。
また、Zoom無料版の特徴として、3名以上の会議では利用時間が40分間に限られているというところです。
しかし40分経ったらティーブレイク、10分後に再び会議というスタイルで、会議の集中力が保たれ、敢えてこの会議方式をとるチーム、会社もあります。
2時間のダラダラ会議はさせないという意味のところもあり、それもありだな、と思います。

Microsoft TeamsとZoom、いずれも有償版では、パソコンと携帯とでは機能や見え方が異なることがあります。携帯でもかなり使えますが、パソコンからの方が録音・録画ができるなど利便性が高く、機能も充実しているように思います。
いずれも今後さらなるバージョンアップが期待され、さらに使いやすくなることが予想されます。

Skypeは現在のところ有償版を前提とせず、Microsoftが有償のTeamsに誘導しているところもあり、通常の身近な者との使用であれば、かなり使用感が良いです。
有償版ですと、全て録音・録画ができ、お互い参加者に対して許可をすることで、言った、言わない、の問題を解消できます。また、会議の議事録を作る手間も省けます。

 

4、WEB会議を行う上での注意点等

<WEB会議でのハラスメント注意点>
WEB会議において、「〇〇さんすみません、顔ちょっと見せてください。ちょっと笑ってみて。ところで、その着ている服いいね、どこの服?」などの発言は、セクハラです。
しかも録画されていると、ひどいことになります。
まず何より、とても格好が悪い。
WEB会議でのハラスメント、私も含めて全員気を付けなければいけません。

<WEB会議での「光」の使い方>
最後に、WEB会議での見せ方、光、照明のライティングの使い方です。
WEB会議において、画像が暗い、顔が見えない、といった状況ですと、元気がない、怪しい、何か悪いことを企んでいるのか、といったイメージになりやすいです。
ですので、いわゆる橙色の明かりで、そして血色が良くなる形でライトの効果を考えましょう。
大きな細かい技術や、専門家のライティングは不要で、少し見栄えを良くする、相手に暗い画像を見せない、それをするだけで、相当イメージが良くなります。

既に申し上げている通り、当事務所では毎日WEB会議システムを使用した所内会議を行っています。お客様との会議も、このWEB会議システムを使用する機会がだいぶ増えてきました。
回数を重ねれば段々うまく使いこなせるようになるものです。
素人の私が、ゼロから始めた者が、こういう風なことに気を付けながら、今、仕事をしています。
ほんの少しでも、お読みになった皆様のお役に立てれば嬉しい限りです。

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自筆証書遺言の記載方式の緩和について

2020年7月8日 弁護士 吉田良夫

2019年1月に施行された「自筆証書遺言の方式に関する改正」(改正後民法968条、970条2項、982条)により、自筆証書遺言の記載方式が大きく緩和されました。
改正前までは遺言書の全文(本文から財産目録に至るまで)を厳格に定められた方式に従って、正確に自書しなければならなかったのですが、改正後は、本文のみを自書し、財産目録に関しては、パソコン等での作成が可能になったほか、財産目録の代わりに銀行通帳のコピーや不動産の登記事項証明書等を添付することができるようになりました。(ただし、その場合には枚数ごと(両面の場合は両面)に署名押印が必要です。枚数が多くなる場合には、財産目録を作成することをお勧めします。)

〈書式〉財産目録(Excel)ダウンロード
〈見本〉財産目録(PDF)ダウンロード

※この財産目録は、お客様ご自身で自筆証書遺言を作成する際に、少しでもお役に立てるようにと、当事務所にてご用意させていただきました。
どうぞご自由にお使いください。

なお、自筆証書遺言の記載様式については、法務省のホームページにて注意事項等の詳しい内容が記載されております。
(参考 法務省HP 「3:自筆証書遺言書の様式について」)

本改正により、自筆証書遺言がより安全で簡単に利用できるような制度に見直されましたが、全くリスクが無くなったわけではありません。
当事務所では、お客様が自筆証書遺言をご希望される際、ご自身で書かれた自筆証書遺言が有効であるか、法律的解釈が難しい文言が使われていないかなどを確認し、安心して最期のお気持ちを残せるようお手伝いをさせていただきます。

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◆法務局における自筆証書遺言保管制度がスタート

法務局における自筆証書遺言保管制度がスタート

2020年7月8日 弁護士 吉田良夫

本年7月10日より「法務局における遺言書の保管等に関する法律」が施行され、これまでは自宅にて保管されることの多かった自筆証書による遺言書について、公的機関である法務局にて保管ができる制度が始まりました。
(参考 法務省HP 法務局における自筆証書遺言書保管制度について

この新しい制度について、以下のメリットが挙げられます。

≪メリット①:遺言書の紛失・改ざんリスクの防止≫

法務局にて自筆証書遺言を保管してもらうことで、遺言書が紛失・亡失されることを防ぎ、また、相続人等の関係者による遺言書の改ざん、廃棄、隠匿などのリスクも防ぐことができ、安心して確実に遺言を残すことができます。

≪メリット②:家裁での検認申立が不要≫

自筆証書遺言については、遺言者が亡くなると、遅滞なく遺言書の発見者や保管者が家庭裁判所において、遺言書の存在や内容を相続人に知らせ、偽装・変造を防ぐ「検認の申立」という手続が必要です(民法1004条)。
しかし、今回の法務局にて保管される自筆証書遺言については、この検認の申立手続が不要となり、残された関係者や相続人の負担が少なくなります。

≪メリット③:公正証書遺言作成より費用が安い≫

遺言の安全性、確実性から公証役場にて公証人が作成する公正証書遺言を作成される方も多くいらっしゃいます。
公証役場において公証人が作成する公正証書遺言は、財産(遺産)の金額や条件によって変動するので参考程度となりますが、財産1億円で約5~15万円程かかると言われています。その点、法務局にて自筆証書遺言を保管してもらう際の手数料は1通につき3900円と費用はかなり安くおさえることができます。

このように、メリットも多い「法務局における自筆証書遺言の保管制度」ですが、当事務所としては従来の公正証書遺言作成の存在意義・メリットも十分あると考えております。具体的には以下のとおりです。

≪遺言者ご本人が外出できない場合≫

法務局における自筆証書遺言の保管制度を利用するためには、予約の上、遺言者ご本人が法務局に出向く必要があります。また、全ての法務局がこの保管制度を扱っている訳ではなく、特定の法務局に限られています。
(参考 法務省HP 法務局遺言書保管所一覧

また、遺言書を預けることができる法務局は以下いずれかに該当する法務局となります。
1.遺言者の住所地を管轄する法務局
2.遺言者の本籍地を管轄する法務局
3、遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する法務局
(参考 法務省HP 遺言書保管所管轄一覧

遺言者ご本人がご病気等の事情で外出が困難な場合、公正証書遺言作成であれば、出張料をお支払いいただくことで公証人がご自宅や施設等へ出張の上、対応してもらうことができます。ご高齢や持病のある遺言者様にとっては、この点は公正証書遺言作成の大きなメリットとなります。

≪遺言文書作成の負担≫

自筆証書遺言作成の際、本文についてはご自分で自書する必要があります。
ご自分としては自筆証書遺言の文言は誰が読んでも明確にわかる内容のはずだと思っていても、相続発生後に遺言執行する段階で、その内容が曖昧で、遺産の帰属が明確にならないため、その部分だけ遺産分割協議が必要になるといった事態がありえるかもしれません。

また、法務局で保管してもらうためには、法務省令(法務局における遺言書の保管等に関する省令)が定めた作成様式で作成する必要があります
(参考 法務省HP 自筆証書遺言書の様式等についての注意事項

その点、公正証書遺言であれば、遺言内容の趣旨(どの財産を誰に相続させるか等)を公証人に伝えることで、専門家である公証人が内容に疑義が生じない遺言書案を作成してくれますから、前記の心配がなくなります。

≪遺言者の意思確認≫

法務局での保管制度を利用した自筆証書遺言であっても、法務局は遺言書の形式的な部分(本人であるか、名前、日付が書かれているか等)の確認のみを行い、遺言書の内容についての確認・アドバイスは行いません。
その点、公正証書遺言作成時には、公証人は事前に文案を作成し、当日は遺言者に遺言内容一つ一つを口述(筆談、通訳を介しても可)してもらうことで遺言の意思確認をしながら、公正証書遺言を作成します。その際、証人2名も立ち合います。
このことを考えますと、相続発生後に、相続人間で「その遺言は本当に本人の意思に基づくものか、遺言は無効ではないのか?」という争いになった場合には、公正証書遺言は相当強い証拠となりますので、相続発生後の紛争予防になると考えられます。

これまでのご説明のとおり、「法務局による自筆証書遺言保管制度」にも「公正証書遺言」にも、メリットと、デメリットとは申しませんが負担または課題は残ります。

吉田総合法律事務所は、ご相談者のご希望を重視し、どちらの制度にも対応する方針です。
遺言者様のお悩み事やご希望など、お話を丁寧にお聞きし、遺言者様に合ったサービスを提供し、納得のいく遺言書作成のお手伝いをさせていただきますので、遺言書作成をお考えの際には、ぜひお気軽にご相談ください。

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また、ご相談予約フォームの受付は24時間受け付けております。
Zoom,Teamsなどを用いたオンライン形式での面談も承りますので、お申し付けください。

 
 

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◆自筆証書遺言の記載様式の緩和について

当事務所のビジネス契約書の検討方針について

2020年6月16日 代表弁護士 吉田良夫

~ビジネス契約書にはどのように対応すべきか~

現代社会は契約と密接不可分の関係にあります。
特に現在の「With コロナ」、「アフター・コロナ」においては、既存の契約内容を遵守できず変更の必要が生じる場合や、全く新しいビジネスの合意が必要になる場合が増加するはずです。
また、「コロナ第2波」に備えるため、「債務不履行の免責または軽減条項」、「不可抗力条項の充実」の検討も必要になるかもしれません。

そもそも契約書の「契約」の部分は「交渉を前提とする合意形成」を意味し、契約書の「書」の部分はその「合意」を書面にする作業という意味を有しています。
そのため、当事務所では、当事者間のパワーバランスに注意して契約書の検討作業を行います。
もし相手パワーが強大な場合は相手に対し契約条項の変更を求めても変更は困難です。
その場合は契約書にどのようなリスクがあるかを具体的に予想することで、Clientのリスク回避に貢献する方が、Clientの役に立つ契約書チェックといえるはずです。

また、契約書が日本語で書かれていても、標準日本語と思い込まないでください。
契約書の条項中に、特殊な意味の業界用語が含まれているかもしれません。
業界用語の中には、省略形の単語でありながら経済的(ビジネス的)に大きな意味を持つ用語もありますので、注意が必要です。

さらに、契約書は安易な気持ちで流し読みをしないでください。流し読みは危険です。
契約書の文言は、一語、一節、一文を細部まで気を抜かずに検討し、その積み重ね作業により「相手の真意は何だろう? 落とし穴はないか?相手の戦略・戦術は何だろうか?」といったことまで考えながら読み込む姿勢が大事です。

次は、星野光子弁護士が、シンプルな契約類型を前提に「ビジネス契約書のチェックポイント」の一例をご披露いたしますので、ご覧ください。

 

 

「新型コロナウイルスに関連する労務問題Q&A」ご提供について

2020年5月25日 代表弁護士 吉 田 良 夫

新型コロナウイルスによる全世界パンデミック被害は言語を絶するものがあり、地球規模で、保健衛生(生命健康)、企業経済活動(売上減少消滅、収入減少消滅)、事業存続危機(倒産廃業問題)、精神的ストレス激増等の多方面に及ぶ深刻な被害をもたらしています。

緊急事態宣言の解除後は、新型コロナウイルス感染症専門家会議の提言を踏まえた「新しい生活様式」が企業活動、社会活動、個人活動の新常識になり、アフターコロナ(A・C)はビフォー・コロナ(B・C)とはかなり異なる社会生活・企業活動になるものと予想されます。

そして、法律問題は現実の被害発生からタイムラグを経て現実問題として紛争化することが多くなります。

そこで、当事務所では、新型コロナウイルスに関連して生じうる労務問題を厳選し、Q&Aの形式でご提供することにいたしました。
今回は、代表弁護士吉田良夫がQ及びAの概要を設定し、星野光子弁護士がそれを前提に熟慮作成し、私と渡邊康寛弁護士が内容検証を行い、最終文責者を代表の私(吉田良夫)としたうえで、当事務所のホームページに掲載いたします。

なお、有事である経済活動の混乱期には労働問題だけでなく、契約を遵守できない事例が増加し、同時に新規ビジネス合意および契約改定合意の必要性も平時より遙かに高くなります。そこで、当事務所では、近日中に「契約書リーガルチェック及び契約書作成業務の一例」を事務所ホームページに追加掲載する予定です。

当事務所は今後とも皆様のお役に立てるように尽力する所存です。
皆様におかれましては、どうか引き続きよろしくお願いいたします。