特定商取引法の改正② 申込時の表示規制・不実告知とは?

2022年6月1日に施行された改正特定商取引法では、通信販売に関する規定を新設し、通信販売の規制を強化しています。

今回の改正法によって、規制対象が広がり、新たに対応が必要となる企業様もおられます。しかし、今回の改正法の内容は非常に細かく複雑で、消費者庁が公表している資料も、量が多くて読み解くにも時間がかかります。

当事務所もこの問題についてお問い合わせをうけることがあり、正確な回答をするために、消費者庁の担当者による有料の解説講義を受講し、所内で消費者庁の公表資料を検討するなどして、今回、改正法の内容をQ&A方式でまとめました(なお、お問い合わせは無料相談ではなく全て有料相談です。)。

今回、より多くの企業様のご参考になればと思い、当事務所のサイトで内容を紹介いたします。

なお、申込時の表示規制については、こちらもご参照ください。

Q1 特商法第12条の6第2項で販売業者や役務提供事業者の一定の表示が禁止されたと聞きましたが、規制の内容はどのようなものでしょうか?

A1 
特商法第12条の6第2項は、特定申込みにおける以下の表示を禁止しています。

①書面の送付や手続きに従った情報の送信が契約の申込となることにつき、人を誤認させるような表示
第12条の6第1項各号に掲げる事項につき、人を誤認させるような表示
(※「特定申込み」については、こちらのQ3をご参照ください。)
①は、特定申込みの際の書面の送付や情報の送信について、それが契約の申込みとなることを消費者が明確に認識できるようにしていない表示を禁止するものです(具体例はQ2を参照してください。)。

この規制は、消費者が契約の申込みとなることを分からずに書面を送付したり、情報を送信したりしてしまい、意図せずに契約してしまうことを防止することを目的としています。

②は、法12条の6第1項各号が表示を義務付けている事項について、その表示が不実ではないものの、消費者を誤認させるような表示を禁止するものです(具体例はQ2を参照してください。)。

また、②の表示に該当するか否かは、特定の文言等の表示だけでなく、他の表示と組み合わせてみた表示内容全体から、消費者が受ける印象や認識から総合的に判断することとされていることに注意が必要です。

そのため、②の表示に該当しないように慎重に検討しなければなりません。

Q2 具体的にどのような表示が特商法12条の6第2項に違反することとなるのか教えてください。

A2

まず、①の具体例は、「無料プレゼント」などの言葉を強調することで、契約の申込みとなることが分かりにくい場合が挙げられます。契約者にのみ「無料プレゼント」を行う場合には、そのことを消費者が誤認しないように表示しなければなりません。

【違反となる例】

(上記図出典:消費者庁の「事業者向け説明会資料」)

また、インターネット通販では、「送信する」や「次へ」とのみ表示されているボタンをクリックしただけで契約の申込みとなってしまう場合には、消費者を誤認させるおそれのある表示となってしまいます。

これを回避するためには、「注文内容の確認」という表題の画面上に「申込みを確定する」といったボタンが表示され、このボタンをクリックすれば契約の申込みとなるようにする必要があります。

【違反となる例】

(上記図出典:消費者庁の「事業者向け説明会資料」)

 

次に、②の具体例は、「お試し」や「トライアル」ということを殊更に強調する表示にもかかわらず、定期購入契約であったり、解約に条件があり容易に解約できなかったりする場合には、消費者を誤認させるおそれのある表示となってしまいます。

また、「いつでも解約可能」と強調する表示も、解約条件が付いている場合には、消費者を誤認させるおそれのある表示となります。

【違反となる例①】

【違反となる例②】

(上記①②図の出典:消費者庁の「通信販売の申込み段階における表示についてのガイドライン」)

Q3 特商法13条の2の不実告知とは

A3

特商法13条の2は、通信販売に係る契約申込みの撤回・解除を妨げるため

①申込みの撤回・解除に関する事項
②契約締結を必要とする事情に関する事項

について不実のことを告げる行為(不実告知)を禁止しています。

この規定は、購入者が解除等を申し出た時に、解除等を妨害する目的で不実のことを告げる悪質な事例がみられたことから、令和3年改正により新設されました。

特商法12条の6第1項と第2項が契約申込みの時点での表示を問題としていたのに対して、13条の2は、契約申込みの撤回や解除の段階での行為を問題としています。

①の具体例としては、事実に反して、「定期購入契約になっているので、残りの代金を支払わなければ解約できない。」と告げることが考えられます。②の具体例としては、販売した商品について、事実に反して、「その商品は、今使用を中止すると逆効果になる。」と告げることが考えられます。

また、この13条の2の要件として、不実告知について主観的な認識は不要とされています。そのため、担当者が誤って、メールや電話やチャットなどで、不実のことを告げてしまった場合でも、13条の2に該当してしまい、行政処分の対象になりますので、ご注意ください。

 

Q4 特商法12条の6や13条の2に違反した場合は、どうなりますか?

A4

⑴ 行政処分や罰則の対象

特定申込を受ける際の表示(特商法12条の6)や不実告知の禁止(13条の2)の規制に違反してしまった場合、行政処分や罰則の対象となります(14条、15条、70条、72条等)。

行政処分には、主務大臣による指示や業務停止命令等があり、罰則は懲役又は罰金が用意されています。

(上記図出典:消費者庁の「事業者向け説明会資料」)

 

 

⑵ 差止請求の対象

違反行為は、適格消費団体による差止請求の対象にもなります(58条の19)。

 

⑶ 特定申込みの取消

また、特定申込みを受ける際の表示(12条の6)に違反した場合で、その表示により消費者が誤認して申込みを行ったときには、消費者は申込みを取り消すことができます(15条の4)。

具体的には、以下の場合に取り消すことができます。

(上記図出典:消費者庁の「事業者向け説明会資料」)

 

⑷ まとめ

以上をまとめると、以下の図のとおりとなります。

なお、これらの違反行為が発覚した場合、報道機関により広く報道がなされ、レピュテーションリスクが生じることもあります。特に、繰り返し違反行為が判明した場合には、回復が困難となることも十分に考えられますので、違反とならないよう対策することが重要です。

(上記図出典:消費者庁の「事業者向け説明会資料」)

 

 

なお、改正特商法については、消費者庁が公表している詳細な資料をご確認ください。

https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_transaction/amendment/2021/

 

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