[第14号] 仕事をするとき、させるときの心構え~心身をまもるために~

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吉田良夫メールマガジン [第14号]
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今月のメルマガ              2016年10月
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仕事をするとき、させるときの心構え
~心身をまもるために~

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皆様

残暑だなぁと思っていたら、もうすっかり秋模様になりました。
日差しや日没時間などからも秋を感じることができます。
皆様も夏から秋そして冬に向けてのご準備をされていることと思います。

ところで、今月は過重労働とそのダメージについて考えてみたいと思います。

これについては深刻なできごとも報道されており、私も皆様と同じく
どうして悲惨なことがおきてしまったのだろうかという思いを
持っております。
他方で、私は具体的な事実を詳しく把握していない、まさに一人の
マスコミ情報受領者にすぎませんから、憶測に基づく意見は
控えたいと考えています。

ただ、案件についてのコメントではなく、一般論としてであれば
皆様にお伝えしたいことはあります。

私も、企業側代理人として、従業員の方がうつ病で自殺された案件を
経験したことがあります。厳しい経験でした。

まず、長時間労働は身体に過重な負担をかけます。
また、身体の負担により脳内のバランスが不調になり、精神状態が
平常性を失う可能性が高くなります。

ですから、労災認定では長時間労働がうつ病発生の判定の重要な
要素になります。

しかし、私はそれだけではなく、長時間労働をする者が、楽しく、
やりがいをもって仕事ができているか、という要素も極めて
重要な要素だと感じています。
楽しい、やりがいがある、夢中になってしまう、という状態ですと、
ある程度の長時間労働をしてもアドレナリンがでて、心身が負担に
耐えることができる場合もあります。

もっとも、そのような場合であっても、「ある程度」という枠を
超える状態になると、負担は負担ですから、心身に大きなダメージを
与えることになります。
ですから、注意が必要です。

つまり、楽しい、やりがいがある、夢中になるといった状態で仕事をしても
(仕事をさせても)、そういった状態を長く継続することは危険であり、
休息は不可欠なんですね。

一般論ですが、他人からの指示だけではなく自分の判断とか意見も
ある程度取り入れてもらえる状況のときは、アドレナリンが出やすく、
心身もタフな状態になりやすいです。
(でも、やっぱり無理は禁物ということは前述のとおりですが。)

他方で、もしも、嫌々ながら仕事をするという状態ですと、
アドレナリンも出ません。そのため、そのような状態のときは
注意が必要です。
そのうえ、批判され、けなされ、プライドがずたずたになりながら、
という状況であれば、さらに厳しい状態になるはずです。

やはり、長時間労働のときは、(残業代という問題について
今回は省くとして)、本人を含む周囲が心身の安全を強く意識して、
指示をしたり、仕事をすることが大事になります。

そこで、思い出すのが、山本五十六の有名な言葉です。

**********************************************
やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、
ほめてやらねば、人は動かじ。

(そして、この言葉には続きがあるそうです。)

話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。
やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず。

含蓄のある言葉ですね。
私も肝に銘じ、すこしでも世の中の役に立てるように努力したいと思います。

今回もお読みいただきありがとうございました。
今後、皆様が私に書いてほしいと思うことがあれば是非返信戴ければ幸いです。
今後とも努力いたしますので、次回もどうかよろしくお願いいたします。

 

吉田 良夫

[第13号] 知床で感じた地球環境のこと

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吉田良夫メールマガジン [第13号]
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今月のメルマガ              2016年9月
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知床で感じた地球環境のこと

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皆様

毎日、蒸し暑い、と思っていたら、いつの間にか秋の装いになってきました。
日本は四季の変化があっていいですね。

ところで私は8月に北海道の知床に行ってきました。
あいにく台風の影響で雨まじりの旅になりましたが、その後の
北海道は多数の台風に見舞われて大変な状況になってしまいました。
私は実はかなりラッキーな天気だったというわけです。

これまでは北海道は台風が来ない地域だったようです。
そのため暴風雨対策、とくに治水対策はあまりとっていなかったようです。
でもそれは当然のことです。
お金と時間は必要性の強い分野に投入するものだからです。

それが今年は多数の台風、それも大型台風が、今まで台風対策を
取る必要のなかった北海道を直撃しました。
多数の家屋の浸水や収穫直前の農作物が水浸しでダメになった様子を
ニュースなどで見聞きしました。
地元の方のショックと受けた被害の大きさを思うと心が痛みます。
もしかしたら、今後は北海道でも台風大雨対策を政策課題にする
必要があるかもしれませんね。

また、地球温暖化の傾向のなかで、台風も巨大化(強大化)すると
いうことを聴いたことがあります。
地球規模の変化の中で、台風コース(通路)が変化することは
十分ありえます。これまで対策が不要だった地域でも、現実と将来を
冷静に見据えて、必要な対策であれば勇気をもって資金投入し
対策を断行するということが必要かもしれませんね。

また、今回の旅行で教えてもらった衝撃のお話もご紹介します。

知床の冬の流氷は有名ですが、その流氷はだんだんと少なくなって
きているそうです。
そして、専門家は、2020年ころには知床でも流氷を見ることが
できなくなる、と言っているそうです。
流氷は一度見ておきたいので、2020年までに行かないと、などと
考えながら、これまで在ったものがなくなる(見ることができな
くなる)というのは寂しいことだと思いました。

南極の氷が温暖化のために、どんどんと溶けているという話しも
聴いていますし、地球の環境変化は東京に住んでいる私の知らない
ところで、急速に進んでいるようです。

また、今回の旅行では、野生のヒグマの親子が海辺(川辺でも
ありました)を歩いていて、親ヒグマが大きなニジマスを口に
くわえている様子も見ることができました。
幸い遠くで見ましたので、親ヒグマの子どもへの愛情と、子ども
ヒグマが親に甘えている様子を、安心して見ることができました。

地球は人間だけのものではありません。
生きとし生けるものがみんな地球で生きている、地球の環境の
中で活かされながら、各々の命を生きている、そんなことを
実感できました。

我々は1人1人では地球環境に対して大きなことはできませんが、
それでも1人1人がそういうものを守ろうという意識を持てば、
地球環境と我々人間を含むすべての生物のためになる大きな
力になるのではないか。

そんなことを感じた数日でした。

今回もお読みいただきありがとうございました。
今後、皆様が私に書いてほしいと思うことがあれば是非返信戴ければ幸いです。
今後とも努力いたしますので、次回もどうかよろしくお願いいたします。

 

吉田 良夫

[第12号] オリンピックの感動

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吉田良夫メールマガジン [第12号]
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今月のメルマガ              2016年8月
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オリンピックの感動

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皆様

今年はオリンピック・パラリンピック・イヤーです。

リオは日本と時差12時間ですが、興味のある種目については夜遅く(朝方)
まで楽しんだ方も少なからずいらっしゃったのではないかと思います。

今回のオリンピックについては、低予算、強盗被害(治安問題)、ジオ熱
といった問題が指摘されておりましたが、それでも、アスリートは
全身全霊を込めて必死になって競技に集中し、全世界に感動のドラマを
見せてくれました。

ところで、この原稿はまだ開催中に作成しておりますので、
各国の最終的なメダル獲得数はわかりませんが、日本は順調にメダルを
獲得しているようです。

もしかしたら、ブラジルには日系人が多数暮らしていて、日本に対し
好意的な雰囲気があって、それで会場内で日本人選手が力を発揮しやすく
なったのかもしれません。

また、ブラジルでは柔道から推移した柔術が独自の発達を遂げて(例えば
グレイシー柔術)、武道精神に深い理解を示す人が多くいるようです。
そういう文化的土壌が無意識的に日本人に対し友好的な応接をして
くれたのではないかというのが私の見方です。

これが反日感情の強い開催地だと、会場で日本人選手に対しあからさまな
敵対心を示すでしょうし、出場選手はそのことをわかっていても(覚悟
していても)、やはり余分なプレッシャーがかかってしまいますから、
どうしても不利になります。
今回はそのようなネガティブ要因がなかったのではないかという気がしております。

また、出場選手について、初出場の選手より2回目、3回目の選手の方が
本来の自力を発揮しやすいという話しを聞いたことがあります。
「場慣れ」ですね。

もちろん、初出場で大活躍のアスリートも多く出ており、「場慣れ」だけでは
ないということはわかっております。

ですが、激しい国内予選をくぐり抜け、1度ならず2度、3度とオリンピックに
出てくるアスリートはやはり「すごい!」。

そして、1度目のオリンピックでわかった自分の改善点を克服し、2度目、3度目の
オリンピックでより成長した自分を見せる、そのことがより高い順位につながり、
メダルにつながるのではないかと思いました。

でも、そんなことはどうでもいい。
純粋に鍛えに鍛えたアスリートの本当に全身全霊を込めた競技に、
ただただ無心に感動し、「すばらしい」と思えるだけでも、幸せです。

そして、4年後は東京でオリンピックです。

今から、本当に楽しみです。

今回もお読みいただきありがとうございました。
今後、皆様が私に書いてほしいと思うことがあれば是非返信戴ければ幸いです。
今後とも努力いたしますので、次回もどうかよろしくお願いいたします。

 

吉田 良夫

[第11号] Brexit(イギリスのEU離脱)について

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吉田良夫メールマガジン [第11号]
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今月のメルマガ              2016年7月
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Brexit(イギリスのEU離脱)について

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皆様

このメルマガを書いているときは、気温も高くなく梅雨真っ盛りという状態です。
ですが配信時には気温がぐんと上がって真夏日になっているかもしれません。
とくに今年は高温になるという厳しい予想が出ていますから、
皆様も体調管理に気を配られるなどしてご自愛ください。

皆様は Brexit という言葉をご存じでしょうか。
イギリスがEUを離脱することという意味だそうで、最近できたばかりの言葉です。

このイギリスのEU離脱は、社会経済にとってショッキングな出来事に
なったようです。
ではなぜ社会や経済はショックを感じるのでしょうか?

第二次世界大戦後のヨーロッパ体制が崩壊に向かう、世界同時株安・
為替大波乱・世界同時不況の始まり、といった声が聞こえます。

でも、世界経済の素人の私には、ショッキングの真相が違うように思えました。

真相は、国民投票を実施したキャメロン首相も、(推測ですが)
投票したイギリス国民(の多く)も、他の諸国の政治経済に関わる
キーマンたちも、ほとんどが、EU離脱の結果にはならない、と
思い込んでいたからではないでしょうか。
もし離脱もありうるという予想をしていたら、株価と為替はあれほど
急落急変しなかったはずです。
つまり、離脱は予想外だったということです。

「予想」と違う結果が出たので慌ててしまい、冷静な思考ができなくなり、
頭と心が混乱して、「ショッキング」という感覚になったのだろうと思います。

でも結果が出た以上はひっくり返らないので、イギリス国民も
他の諸国もそれに従うしかありませんね。

ところで、イギリスはジェームズボンドを輩出したように世界トップクラスの
諜報機関(諜報組織)を持っているわけで、イギリスは大英帝国領域外の
ヨーロッパ領域でかなり諜報活動をしやすかったのではないでしょうか
(私の根拠のない推測ですが)。

そして、イギリス以外のヨーロッパ諸国もテロ対策情報とかリスク情報に
ついてイギリスと情報共有をしやすかったと思うのです。

今回のEU離脱で、イギリス連邦とEU諸国はいろいろなネットワークが
脆弱化するでしょうから、当然に両者の対テロネットワークも、
国民投票前よりは弱くなるかもしれません。

でも、離脱派を支えた中高年は違う論点で離脱を求めたという話も聞きます。
イギリスは税金が高い代わりに、医療や福祉についての支払額が非常に低額
だそうです。
しかし、大量の移民が「割り込む」ことで国民1人あたりの医療と福祉の
実質サービス力が低下した。今後もっと低下する。そうすると、
これから医療と介護を必要とする中高年にとっては、「自分たちの医療と
介護が不十分になる。それは移民のせいだ。離脱だ。」という危機感が
あったらしいのです。

また、チョコレートを例にすると、EUでは厳格なチョコレート基準が存在し
(どうもそれはゴディバがあるベルギーの基準らしいのですが、詳細を
確認しないで書いています)、イギリスで作るチョコレートは
EUチョコレート基準を満たさないものが結構あって、
イギリス国内のチョコレート産業に従事する人の間では「面白くない」
という不満があったという話も聞きました。
要はEU統一基準に対する不満も離脱票に流れた要因らしいということです。

そして今回の国民投票になったわけです。
国民投票では各人がどの論点を重視して投票するかはすべて投票権者の自由です。

自分の価値観に基づいて、または自分が大事だと思う利益のために
投票することができますし、その集積で結論が決まります。
それは国民投票のメリットであり特徴です。

他方で、投票する者が極めて多数になりますから、どうしても投票者は、
「国家百年の大計を立てる」とか、「国際政治、国際経済の観点からの
国家の維持発展」というグローバルな視点を欠く可能性があります。

EU離脱に投票したけれども、やっぱり離脱しない方がよかったかも、
と思い始めている人もいるかもしれません。

ですが、イギリス連邦は離脱に向けて舵を切りましたから、
我々はEU離脱に心を乱されずに、各人が各々の持ち場で
その責務と仕事を果たすことで、明るい力強い社会にしていくことが
大事だと思いました。

今回もお読みいただきありがとうございました。
今後、皆様が私に書いてほしいと思うことがあれば是非返信戴ければ幸いです。
今後とも努力いたしますので、次回もどうかよろしくお願いいたします。

 

吉田 良夫

 

[第10号] メルマガ発刊1年を振り返って

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吉田良夫メールマガジン [第10号]
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今月のメルマガ              2016年6月
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メルマガ発刊1年を振り返って

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皆様

すっかり梅雨入りしておりますが、皆様はいかがお過ごしでしょうか。

このメルマガも昨年2015年6月22日のご挨拶メール0号から始まり、
翌7月の第1号からこの第10号まで1年の間にわたり続けることができました。
これもひとえにお読みいただく皆様のおかげです。
深く感謝いたします。

私はこのメルマガで、私の基本的な考え方や感覚を、
皆様に堅苦しくなくお伝えしたいと思っております。

誰でも自分の大事な問題を人に相談するときには、
単にその人に知識がありそうだとか、なにやら肩書きがある
そうだというだけでは足が向きません(とはいえ、
私に肩書きがあるわけではないのですが…)。

私も、人に相談するときは、その人がどんな考え方をする人か、
そもそもどんな人か、ということをとても大事にしています。

そのような観点から、私の基本的な考え方や感覚をお伝えできるものは
ないだろうかと考えメルマガを思いつきました。

また、せっかく法律にどっぷりとつかっているのですから、
私がお伝えできる能力と力量のなかで、ことがらの本質的なところを、
なるべく柔らかな表現で、皆様に感覚的に感得していただけるようなものを
提供できないものかと考えました。

法律と判決はたくさんあります。
しかも、あちらとこちらでまるで違う、と思えることもあります。
そうすると、難しい、わからない、という気持ちになりがちです。

ですが、本質的なところがわかりますと、あちらとこちらの違いが
理解できるようになります。
細かいことも、「なるほど。そういうことか。」という感じで
理解できるようになります。

私も仕事の年数はそれなりになってきましたが、
ことがらの本質的理解については、まだまだ修行中の身です。
とはいえ、せっかくこのようなことを思いついたのですから、
やってみようと思った次第です。

皆様がパソコンやスマートホンの画面で、さらっと目を通すことができて、
なんとなく頭の片隅で覚えていただきながら、必要なときにお役に
立てるような内容にできたら、いいなぁ、と思っております。

ときどき、メルマガをお読みいただいている方から、メルマガへの
励ましをいただくこともあります。大変にありがたく、うれしく思います。

ただ、「良いものをお出ししよう」と意気込むと、気持ちが空回りして、
かえって書けなくなります。
あまり意気込みしないで、虚心坦懐でこれからも努力していきたいと思います。

ご参考までにこれまでのメルマガ各号の内容一言をまとめて記載します。
もし過去発刊分のメルマガについて興味があるという方がおられましたら、
このメルマガアドレスにお問い合わせください。PDFでご送付いたします。

▼これまでのメルマガ内容▼
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第0号 2015年6月22日 ご挨拶

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第1号 2015年7月13日 中村天風先生の命のお話
法律コラム ~契約と契約書の関係

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第2号 2015年8月3日 ぜひ推薦したいテレビ番組
(テレビ体操のすばらしさ)
法律コラム ~判例は変わる
「サッカーボール訴訟」
・事案の概要と問題の前提事情
・最高裁判決の理由部分

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第3号 2015年9月14日 生き延びてきたホモ・サピエンスと言葉の力
法律コラム ~交渉ノウハウ~

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第4号 2015年11月4日 法律コラム
~ AV出演拒否違約金判決について ~

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第5号 2015年12月8日 法律コラム
~ 元アイドル交際禁止条項違反で賠償金の
判決について

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第6号 2016年1月25日 ヘルス情報
~腹筋運動が危ない! 最近のニュースより
法律コラム ~追記報告~
元アイドル交際禁止 東京地裁が請求棄却(別判決)

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第7号 2016年3月1日 ホウレンソウの効用と注意点

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第8号 2016年4月18日 平成28年熊本地震について

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第9号 2016年5月9日 ニコニコ円満相続のために
(泥沼争族にならないために)

今回もお読みいただきありがとうございました。
今後、皆様が私に書いてほしいと思うことがあれば是非返信戴ければ幸いです。
今後とも努力いたしますので、次回もどうかよろしくお願いいたします。

吉田 良夫

[第9号] ニコニコ円満相続のために(泥沼争族にならないために)

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吉田良夫メールマガジン [第9号]
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今月のメルマガ              2016年5月
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ニコニコ円満相続のために(泥沼争族にならないために)

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皆様

皆様のゴールデンウィークはどのようにお過ごしされたでしょうか。

私はGW直前の4月28日(木)の午後から風邪症状が出始め、
それがけっこう本格的な風邪になってしまい、翌日の29日からGWを
ほとんど風邪の回復にあてるという有様でした。
そのおかげで、風邪を引かないで自分の思うとおりに動けるということが、
いかにありがたい(有り難い)ことかを再認識できました。
まさに健康のありがたさを実感いたしました。

また、結構な風邪症状になってしまい、まともに動けなかったので、
どうして風邪を引いたのかを手帳を見ながら考えてみました。
そうすると、どうも1ヶ月前くらいから、「風邪気味、注意」とか、
「疲れがたまりかけているから注意」といった書き込みがありまして、
疲れと少しの風邪症状が積もり積もって、GW直前に「発症」と
なったようです。
結果には必ず原因ありというわけでした。

皆様も疲れを感じたときは、普段より少し多めに休養をお取りいただき、
風邪などお召しにならないようにされてください。

* * *

さて、今回は相続と遺言状について少しお話をさせてください。

私は、いつ頃からか、常に相続と遺言状の案件を扱うようになりました。
今現在も、数件、ご対応しております。

もしかしたら、私が事業承継と経営権問題を多く扱っているので、
それに近接する分野ということで相続と遺言状のご依頼がだんだんと
増えてきたのかもしれません。

相続は不思議なものです。
笑顔ニコニコ円満相続(遺産分割)もあれば、骨肉の争いを意味する
「争族(そうぞく)」になることも少なくありません。

特に、家督相続的発想で遺産分割をするときとか、親が事業を営んで
いて子息子女が事業承継として相続を考えるときなどは、
相続人間の基本的な前提が違うために争族になりやすい(ドロドロ
案件になりやすい)です。

また、相続人の誰かが返済困難な多額の借金を抱えているときも、
遺産の配分を巡り争族になりやすいです。

それだけでなく、まさに人間の業のようなものでしょうか、
経済的・社会的地位がある方同士でも、兄弟姉妹間や親子間の
「仲の悪さ」が主因で争族になることもあります。

そして、これらの争族になりやすい事情があるときに、親が
遺言状を残さずに死亡すると大変です。

遺産の配分は、遺言状がないときは、相続人間の協議(遺産分割協議)
か、調停(裁判所での相続人全員の合意)か、審判(裁判所が下す判断)
で決めることになります。
スムーズな遺産分割協議で決まらないと、「争族に向けて一直線」に
なりやすいです。

ちなみに相続税が発生する事案でも、税金は納期限を待ってくれません。
納期限経過後は所定の税率に従い延滞税が付加されます。
ですから相続税を支払う案件で争族になると税金の支払いも大変です。

特に家業で事業を営んでいるケースで争族になってしまい、
株が仲の悪い兄弟姉妹間で分散してしまうと、そこに会社法に詳しい者
(大抵は弁護士ですが、弁護士資格のないコンサルタントの場合も
あります)が経営権奪取や金銭獲得目的で経営者ではない相続人に
アドバイスをするといった事態もないとはいえません。

残念ながら、中小企業は厳密な意味で会社法の法規を遵守しきれて
いないことが多く、いちゃもんのタネはいっぱいあることが普通です。
そうなると経営基盤が盤石ではない中小企業にとっては大きな混乱に
なりかねません。

このようなドロドロ劇を避けるためには、言われ尽くされていること
ではありますが、遺言状の作成が大事になります。

ただ、自分で書いただけの自筆証書遺言ですと、それは無効だと言って
有効性を争ったり、それとは違う自筆証書遺言(年配の弁護士で
「あり得ない証拠」のことを「お化け」という方もいましたが…)
が出て来たりという事案もあります。

恋愛感情が憎悪感情になって残虐な殺人をすることもあるのが人間ですから、
何が起きるかわかったものではありません。
ですから単に自筆証書遺言があるからといって安心できません。

やはり、ごたごたは人生の不幸ですから、親の責務として、
親自身が健在なうちに、円満な遺産分割のために、公証人による
公正証書遺言で遺産の配分を定めておくことが望ましいと思います。

さらに、公正証書遺言では、付言事項という欄で自分が言い残して
おきたいことを明記することもできます。
親としての「愛情と思い」を公正証書という厳格な書式で明記して、
「くれぐれも争族になるなよ」と伝えることも大事ではないかと思います。

今回は、風邪を引いたこともあり休養のGWとなりました。

そこで、休養しながら、疲弊と苦悩の争族はなしにして、
親子兄弟姉妹のニコニコ円満相続になるための基本的なことをおさらいしました。

今回もお読みいただきありがとうございました。
次回もどうかよろしくお願いいたします。

 

吉田 良夫

[第8号] 平成28年熊本地震について

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今月のメルマガ              2016年4月
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●平成28年熊本地震について
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皆様

こんにちは。
メルマガ第8号です。
今回は、平成28年4月14日に発生した「平成28年熊本地震」を
取り上げることといたします。
4月14日の地震は前震であったようです。
そして、16日午前1時25分の地震が本震と報道されております。
東日本大震災のときは、被害者の方々の大きな不幸と被災地の
惨状を見て、心が痛みました。
東京は震度5強でした。震度6以上のところより軽いはずなのに、
本当に大揺れを感じ、驚愕しました。
また、東京も多数の余震が続き、私は揺れていない時でも揺れて
いるような感覚になっておりました。
そのとき、東北や東関東の方々は本当につらい思いをされている
だろうなと思いました。

今回の熊本地震も大変な大災害です。
今の時点で多数の方の被害が報道されており、被害情報は
今後も拡大するかも知れません。
尊いお命も多数失われました。
ご冥福を心よりお祈り申し上げます。
また、被災に遭われた皆様のことを思うとき、少しでも早い心身の
ご回復を祈念する次第です。
現時点では、各々ができる範囲で資金と物資の支援をすることが
大事だと思います。
皆様もご存じかもしれませんが、寄付の情報として以下を記します。
私も寄付をいたしました。
支援は早急の支援と継続的な支援の両方が必要です。

日本赤十字社の義捐金: http://www.jrc.or.jp/contribute/help/28/
熊本県庁による義捐金募集: http://www.pref.kumamoto.jp/kiji_15416.html?type=top

そして、復興のためには、各人がいつも通りの経済活動と社会活動
を継続することが大事です。東日本大震災の復旧のときも、
イベントや会合の自粛よりも、安全が確保されるのであれば自粛
しないで実行することが効果的だと言われました。

また、被災地に行かなくても支援できるやり方があります。
それは被災地のモノを購入する(それにお金を使う)ということです。
各人にとって小さな購買でも多くの人が行えば強い力になります。
被災地地方のモノにお金を使う。
そのような支援のやり方もあるように思います。

ところで、大震災ということで、東南海地震、南海トラフ地震、
首都圏直下型大地震、富士山大噴火といった将来の大災害に
ついての情報を見聞きして、精神に負担を感じる人もいらっ
しゃるかもしれません。
しかし、将来の地震災害のことは、今の時点では国家と専門家に
委ね、我々は不安を増大させないことが大事だと思います。
特に実際に被災に遭われた方は、少しでも早く心身のご回復を
されることが第一です。

他方で、幸いにして災害を免れている者は、東日本大震災の復旧も
まだ終わっていない段階で今回の熊本地震が発生したという事実を
直視し、現在の災害の復旧支援とともに、将来に向けてのより強固な
防災対策を政策として要求し、その対策実施を支持し、協力する
ことが大事になると思います。
防災対策は日本の大きな課題であります。

今回のメルマガのテーマについては、私が特に詳しいという訳では
ありません。
しかし、何か少しでもお役に立てることがないかという気持ちで、
このような内容になりました。
今回もお読みいただきありがとうございました。
次回もどうかよろしくお願いいたします。

吉田 良夫

[第7号] ホウレンソウの効用と注意点

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吉田良夫メールマガジン [第7号]
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今月のメルマガ              2016年3月
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●ホウレンソウの効用と注意点

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こんにちは。
メルマガ第7号です。

2月中旬頃には第7号を出すつもりだったのですが、いつのまにか
3月に入ってしまいました。
もう公園では桜が咲き始めています。
皆様のご近所でも、早咲きの桜がほんのりと木々に桜色の彩りを
添え始めているものと思います。

今月は、私がセミナー講義をする際によくお話しする
「ホウレンソウ」についてです。

セミナー前は「ホウレンソウ」なんてコンサルタントの講義で
聞き飽きているよという雰囲気もあるのですが、講義後のアンケートで
好評をいただくことが多いので、今回はこれを題材にすることにしました。

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●ホウレンソウの効用と注意点
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ホウレンソウ、つまり、報告・連絡・相談は仕事の際によく言われますね。

これは、①組織内での上司と部下の間のコミュニケーションの場合と、
②別組織に所属する者同士ではあるが、一定の目的のために協力して
仕事をする間柄のコミュニケーションの場合があります。

クライアントと弁護士は典型的な後者の関係ですね。

そして現在の我々はコミュニケーションのときにはよくメールを使います。
ビジネスでコミュニケーションの際にメールを全く使わないというのは
「まれ(ほとんどない)」です。

ですからホウレンソウはメールとセットになっています。

では、面談の際の情報量と、電話の際の情報量と、メールの情報量は
どうなっているでしょうか。

私はイメージを明確にしてもらうために、

面談の際の情報量を10だとすると、電話はお互いに事前に何時に
何を話し合うという約束をしたうえでの会話であっても最大で
5以内で、メールはせいぜい1程度だと説明しています。

また、電話は事前の約束なしで相手と話をするときは、関係の良好な
者同士であっても、話が「つたわりにくい」ということがありがちです。
そのうえ、携帯電話で音声の音質が悪いという場合では、なおさら、
情報量が少なくなります。

ましてやメールは、面談や電話に比べて情報量の少なさは歴然としています。

相手がきちんと読んだのか、読んでしっかりと理解したのか、
メールの内容について質問や疑問があるかどうか、といった面談や
電話だと直ぐにわかることがわかりません。

ですから、メールだけでホウレンソウをすると、非常に少ない情報量で
コミュニケーションを完結することになり、本来の目的(仕事)が
失敗してしまうとか、トラブルを誘発するリスクが高くなります。

私は、その原因の一つとして、「メールだけで指示をすると、指示を
受ける側は指示をした者の指示内容(やってほしいこと)を誤解しやすく
なる」ということがあると思っています。

せめてメールの前か後で、電話か、立ち話程度でもいいから口頭で
説明をしてくれれば(私は「立ち話ミーティング」の意味で
「立ち話MT」と名付けています)、何をすればいいかがわかるはずです。

しかし、それすらないことが実際は多いので、やっぱり誤解が生じやすいのです。

これを別の言葉でいうと

①実際は上司が指示しても、部下は「実際は理解できていなかった」。
しかし、両者はそのギャップを認識していなかった。

ということです。

同じことは、上司が部下から報告を受ける際の、報告内容の確認の
ときにも当てはまります。

②部下から報告があがった。
しかし、上司が適切に質問し確認すれば部下は「適切な報告を
することが可能だった」が、上司が確認しなかったので部下は
不適切な報告をしたことに気がつかなかった。

例えば、

部下から報告のメールが来ます。

上司は「そのメールをしっかり読んで確認する」といいたいところですが、
上司も忙しいので、「よし、メールと添付ファイルはきちんと届いたな。
これでこの話は前に進めることができる。」ということで、内容の吟味が
不十分になるときがあります。

また、部下は上司に報告する際には、自分の持っている情報のほんの
少ししか提示していません。ですから内線電話(社内携帯)や立ち話MTで
メール内容の検証をするという確認態度は有益です。

人間はどうしても、検査する人への納品はきちんと行いますが、検査すら
しない人への納品は忙しいときは、品質を不十分にして体裁だけ整えて…
ということにもなりかねません。

部下からすると、自分の努力をしっかりと見てくれる人と、そうではなくて、
自分の努力をきちんと見てくれない人とでは、どうしても熱の入り方が
違ってきます。

したがって上司は上司の責務として、部下からもらった報告にはちゃんと
接する必要があります。
ですが、そうは言っても、上司も忙しいですね。

そこで、せめて内線電話(社内携帯)や立ち話MTをすることで、
「気持ちのこもった納品チェック」をすることが効果的だと思うのです。

最後に一言。

ホウレンソウのメリットはなんでしょうか。

それは、①効率と業績の向上 と ②トラブルが起きにくくなる
(トラブルの発生可能性が減少し、かつ、その損失が小さいものになる)、
ということです。

私はホウレンソウがしっかりしている組織は、危機管理が充実していて
(つまり危機に強い)、それだけでなく、平時の業績が右肩上がりで
向上しているはずだと信じています。

それだけ効能のあるホウレンソウですから、その活用は大事なことです。

今回のメルマガでは、私の考えている「ホウレンソウ論」を書かせていただきました。

今回もお読みいただきありがとうございました。
次号もどうかよろしくお願いいたします。

 

吉田 良夫

 

[第6号] ヘルス情報 ~腹筋運動が危ない!

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今月のメルマガ              2016年1月
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【1】ヘルス情報 ~腹筋運動が危ない!
最近のニュースより
【2】法律コラム ~追記報告~
元アイドル交際禁止
東京地裁が請求棄却(別判決)
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皆様

少し遅くなりましたが、明けましておめでとうございます。
皆様にとって少しでも楽しく、お役立つものをお届けしたいと
思いますので、本年もどうかよろしくお願いいたします。

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【1】ヘルス情報~腹筋運動が危ない! 最近のニュースより
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今回は、年始めということで、年明けに目にしたヘルス情報から
お伝えしたいと思います。

今年も「よ~し、今年はしっかり運動するぞ。」という決意を
された方も多いと思います。
私もその一人でして、「たるんだお腹を腹筋で鍛えて」、
というようなことを考えていたのですが、そんな私にとって
ショッキングなニュースをお伝えします。

私は年始めのNHKテレビニュースで知ったのですが、
発信源は昨年末のアメリカのウォールストリート・ジャーナルです
(以下、WSJと記します)。
http://torikai.us11.list-manage.com/track/click?u=9b78c20553f238da5c697d1d4&id=7828d9e657&e=348e789b5e

WSJは、両手を頭の後ろで組んで、肘が膝に当たるまで上体を
起こす、誰でもイメージする「普通の腹筋運動(カールアップ)」
が「腰回りを痛める主要な原因」だとする米海軍専門誌の論説や、
カールアップは潜在的に椎間板ヘルニアを発症させる恐れがある
という教授見解を紹介しています。

私はこのニュースを知って、「腹筋運動をしなくて運が良かった」
などと勝手に自分の運動不足を自己正当化したくらいです。
昔はウサギ跳び運動が普通だったのに、今は膝を痛めることがわかって、
ウサギ跳び運動はしなくなりました。「普通の腹筋運動」も
近い将来、ウサギ跳び運動と同じになるかも知れませんね。

ちなみにWSJによると、

カナダ軍は最近、けがにつながる可能性と実際の軍の仕事との関連性が
低いことを理由に、体力テストから腹筋を除外した。

米軍兵士1500人を対象に実施した調査によると、3部門に
分かれた軍の体力測定から派生したけがの56%が腹筋運動に
関連していた。約3・2キロのミニマラソンに絡むけがは全体の32%、
腕立て伏せが11%だった。

そうです。

では腹筋をつけるにはどうしたらいいのしょうか?

カールアップが危険だとしても、複数の腹筋の鍛え方があるそうですが、
WSJはヨガから派生した「プランクポーズ」を好意的に紹介しています。

ネットで調べますと、「プランクポーズ」というのは、
「腕立て伏せをして腕をまっすぐに伸ばしきった状態」のまま、
「肩からかかとまでの部分」を「一直線のラインにして静止する」
ポーズとして紹介されています。
私もやってみましたが、このポーズで静止すると確かに「きつい」運動
になることがわかりました。

ですが、WSJは、上記とは少し違って、「プランクポーズは
腕立て伏せの上がった状態に似ており、かかとから肩までの部分を
水平に保つ。また、肘を床につけた格好で行われることも多い。」と
説明しています。

そして、モデル写真として、女性が腕立て伏せの格好のまま、
肘を床につけて、肩からかかとを一直線のラインにして静止している
ポーズを掲載しています。
つまり、このポーズをおすすめしますよという意味のようです。

なお、WSJは、「プランクポーズは胴体あるいは体幹の前部と側部、
背部の筋肉を使うが、腹筋運動は筋肉のほんの一部しか必要としない」
という説明も付記していて、リスクを回避できて運動効果も高い
という説明をしています。

私も今年は年始めからよいヘルス情報を見つけましたので、
たるんだお腹を少し鍛えることにします。

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【2】法律コラム~追記報告~
元アイドル交際禁止 東京地裁が請求棄却(別判決)
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メルマガ第5号では、東京地方裁判所(裁判官 児島章明)が
昨年の9月18日に言い渡した「元アイドル交際禁止条項違反で
賠償金を認めた判決」を題材に裁判の本質のようなことを書かせて
いただきました。

ところが、2016年1月19日の日本経済新聞(朝刊)、
朝日新聞(朝刊)などの報道によりますと、東京地方裁判所で、
1月18日に(メルマガ5号の事件とは別事件です)、

元アイドルの女性がファンとの交際を禁じた規約に違反したとして、
マネジメント会社が女性と交際相手の男性らに約990万円の
損害賠償を請求した裁判の判決があり、
判決(原克也裁判長)は、
「(契約は)幸福追求の自由を著しく制限している」
「異性との交際は幸福を追求する自由の一つで、アイドルの
特殊性を考慮しても禁止は行き過ぎだ」
という理由で、会社の請求を棄却したとのことです。

やはり最初の判決があまりにもおかしなものだったので、
大手マスコミもこの論点に関心をもって、今回の報道になった
のだろうと思います。

理由や結論は当然のことなのでこれ以上深入りはしませんが、
メルマガ5号でも書いたように、裁判というのは神様ではない
人間が裁判官として、裁判で出された主張と証拠を前提に考えて、
結論を出すシステムにすぎません。

そのため、当事者がどのような主張をするか、証拠として何を
出すかという要素だけでなく、どんな裁判官に当たるかなどと
いう偶然の事情によっても結論が異なってきます。

ですから、冷静に分析し、ファイトを出して、頑張って、
結論が出てもそれであきらめずに次のことを考える、
という「努力」がとても大事です。
私はそのように考えています。

今月もお読みいただきありがとうございました。
そして本年もどうかよろしくお願いいたします。

吉田 良夫

[第5号] 元アイドル交際禁止条項違反で賠償金の判決について

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吉田良夫メールマガジン [第5号]
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今月のメルマガ              2015年12月
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法律コラム

~ 元アイドル交際禁止条項違反で賠償金の判決について ~

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皆様

こんにちは。メルマガ第5号です。

今回は前回第4号で少しだけお伝えした、東京地方裁判所
(裁判官 児島章明)が今年の9月18日に言い渡した
「元アイドル交際禁止条項違反で賠償金」
の判決を題材に裁判の本質のようなことを考えてみたいと思います。

…この事案の概要は以下の通りです…

当時15歳の少女が、2013年3月にアイドルになるためにプロダクションと
専属契約書を締結した。その契約条項には「ファンとの交際が発覚した
場合は、プロダクションは契約を解除し、損害賠償を請求できる」と
いう内容の定めがあった。
また、そのプロダクションには「男友達と2人で遊ぶこと、写真を撮る
ことは一切禁止」という規約があった。

少女はその年の7月にアイドルグループとしてデビューしたが、
10月上旬に男性との交際写真を撮られ、その写真はプロダクションに
渡った。
この時点で交際は世間に知られていなかったが、プロダクションは
10月下旬にそのアイドルグループを解散した。
そして、プロダクションはそのアイドルグループによって得ることが
できたはずの利益として510万円を請求した、
という事案です。

そして、児島章明裁判官は、当時15歳の少女が異性と交際したことが
プロダクションに対する不法行為に該当するので、結論として65万円を
支払えという判決を下しました。
少女は東京高等裁判所で争うことをしないで、この判決は確定したようです。

…判決のポイント…

本件グループはアイドルグループである以上、メンバーが男性ファンら
から支持を獲得し、チケットやグッズ等を多く購入してもらうためには、
メンバーが異性と交際を行わないことや、これを担保するためにメンバーに
対し交際禁止条項を課すことが必要だったとの事実が認められる。

アイドルおよびその所属する芸能プロダクションにとって、アイドルの
交際が発覚することは、アイドルや芸能プロダクションに多大な社会的
イメージの悪化をもたらすのであり、交際禁止条項を設ける必要性は相当高い。

被告少女は、当時本件契約等を締結してアイドルとして活動しており、
本件交際が発覚するなどすれば本件グループの活動にも影響が生じ、
原告ら(注:プロダクション会社)に損害が生じうることは容易に認識可能
であったと認めるのが相当である。
そうすると被告少女が本件交際に及んだ行為が、原告らに対する不法行為を
構成する。

被告少女は交際禁止条項があることを知りながら、故意または過失により
これに違反し、本件交際及び発覚に至ったことは明らかであるから、
債務不履行責任および不法行為責任を負う。

芸能プロダクションは、初期投資を行ってアイドルを媒体に露出させ、
これにより人気を上昇させてチケットやグッズ等の売り上げをのばし、
そこから投資を回収するビジネスモデルを有していると認められるところ、
本件においては本件グループの解散により将来の売り上げの回収が困難に
なったことが認められる。

しかし、プロダクションの指導監督が十分ではなかったので、
少女が支払うべき金額は過失相殺により65万円である。

…私が疑問に思うこと…

プロダクション会社(原告)が交際の事実を知ったのが10月初旬なのに、
10月下旬に早々とグループを解散させたことが合理的な判断といえるのか。
そんなに早々と解散させてプロダクションは不法行為による損害を被った
といえるのか?

アイドルが男性ファンから支持を得るために交際禁止条項が必要なのか。
女性アイドルが男性ファンと交際したら男性ファンからの人気がなくなるのか?

当時15歳の少女が異性と交際すると、プロダクション会社に対するマナー
違反にとどまらず、法律上の「不法行為責任」まで負うことになるのか?

「アイドルとは芸能プロダクションが初期投資をして媒体に露出させ、
人気を上昇させてチケットやグッズなどの売り上げを伸ばし、投資を
回収するビジネスモデルである。」という部分については、
アイドル=人ではなく商品、という前提になっていて違和感があります。

ですが、仮にアイドル=商品という前提で考えても、児島裁判官は
アイドルビジネスの投資回収期間を非常に短期的にとらえているような
気がします。

すぐに儲からないとダメ、最初に傷がついたら「もう使い物にならない」と
言っているのと同じではないでしょうか?

私は、そもそもの話として、交際を広く一般的に禁止する条項は公序良俗に
違反し無効(民法90条)になるのではないかと思えてなりません。

ただ、この事案では、被告にされた少女は本当に大変だったと思います。

せっかくアイドルとしてデビューしたのにグループを解散させられて、
裁判で被告にされて、自分の交際のことをいろいろ言われて、1審判決で
相当に心身が疲れてしまったのではないかと思います。

それが理由で少女は控訴しないで1審判決を確定させたのだろうと
推測していますが、もし控訴して東京高裁で公序良俗違反を主張したら
(私なら公序良俗違反も主張したと思うのですが…)、
1審判決とは逆の「交際禁止条項は無効」という判断になったかもしれないと
思います。

…訴訟で自分の思いや考えを実現させるためには…

このメールマガジン第2号でご紹介したサッカーボール事件(最高裁判所
第一小法廷・平成27年4月9日)では、1審2審で支払義務があるとされた
のですが、最高裁で判例変更により支払義務はないとされました。
もちろん上級審で争っても勝てるとは限らず、実際は上級審での逆転勝利は
確率的に厳しいことは確かです。

ただ、1審の裁判官により下された判決に納得できず、法的に逆転判決の
可能性がありそうだと思えるときは、遠慮しないで控訴して争っても
よいのです。

裁判というのは神様ではない人間が裁判官になって、裁判で出された主張と
証拠を前提にして、結論を出すものなので、どのような主張をするか、
証拠として何を出すか、裁判官がどんな考え方をするか、によって結論が
変わってきます。

だから、日本をはじめとする多くの国で三審制(地方裁判所、高等裁判所、
最高裁判所)のシステムを採用しています。
そして、その三審制によってメルマガ第2号で紹介したような上級審で
結論が変わるという事例も生まれます。

そして、裁判の結論が予想に反するものだったり、上級審で結論が変わって
しまうことを比喩する言葉として、「訴訟は水もの」という言葉があります。
これは法律実務家にとって聞き慣れた言葉なのですが、もしかしたら
初めてお読みになる(お聞きになる)方もいらっしゃるかもしれません。

訴訟で自分の思いや考えを実現させるために、どのような主張がよいか、
その主張のためにどのような証拠を出すべきか。

それでも、訴訟は水もの。結論がおかしいと思うときもある。
でも他の裁判官は違う考え方をするかもしれない。控訴をしようと
思えばできる。さて、どうするか。

裁判ではこのような検討がよく行われます。

この事案では私は判決内容に本当にびっくりしました。
そして、事案のことを考えるうちに、皆様と一緒に裁判という制度の
特性を考えてみたいと思い、メルマガ第5号でとりあげることにしました。

今月もお読みいただきありがとうございました。

 

吉田 良夫