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今月のメルマガ 2018年11月
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◆カルロス・ゴーン氏の逮捕で思ったこと
~ 幸せってなんだろう ~
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皆様
11月も下旬になりますと、あと1ヶ月ちょっとで来年ですね。
子供は1年を長く感じるけれども、大人は年を重ねるごとに
1年を早く感じるようになる、と聞いたことがありますが、
私にとってはまさにその通りです。
ところで、最近、びっくりしたニュースがありました。
皆様ご存じの、あの「カルロス・ゴーン」氏の逮捕です。
「まさか…こんなことが…」
という状態ですね。
今回のゴーンさんの逮捕容疑は、(今のところ)有価証券報告書に
報酬額の虚偽記載をしたという罪です。
有価証券報告書虚偽記載罪というのは、
たとえば、実情は大赤字で倒産寸前なのに、投資家が読む有価証券報告書に、
「うちは儲かってまっせ。期末の儲けはこんなに儲かる見込みでっせ」
という嘘記載をされると、投資家はだまされて投資をする
(株を購入する)かもしれません。
そして会社が倒産になれば、嘘記載を信じて株を買った人は損をします。
また、そういうことがまかり通ると誰も株を買うという投資を
しなくなります。
そこで、そのような投資家の投資判断を間違えさせないために、
有価証券報告書には嘘を書くな、という規制をしています。
つまり、有価証券報告書虚偽記載罪が予想しているのは粉飾決算の事例です。
ところが、今回は経営トップが受領した報酬額を過少記載した
という事例です。
ゴーンさんの行動は倫理的にはめちゃくちゃで、
開いた口がふさがらない(ただただ、唖然…)という状態ですが、
それでも投資家が自分の儲けのためにどこの会社に投資するか
という判断の局面では、赤字なのに儲かっているという虚偽記載を
する典型的事例とは違います。
それに私は、私がとっている新聞その他の報道から、
ゴーンさんとケリーさんの罪は、特別背任罪という会社役員の罪
の方がどんぴしゃりじゃないか…
という感覚をもっていました。
(もしかしたら、今後、特別背任罪に進むかもしれませんし、
そうではなく、特別背任罪にすると他のところで「問題」が
生じるという判断で特別背任罪を使わないで「けじめ」を
つける方針なのかもしれません。
これは時間が経過するとすべて分かりますね。)
また、報酬ごまかしの事例では納税関係で問題が生じることが
あり得るので、もし税務申告に「ごまかし」(故意)があると、
脱税ということになりかねず、脱税額が一定額を超えると
それだけで実刑になってしまいます。
そこのところ(納税)はどうなんだろう、と思っていました。
そんななかで、インターネットニュースを検索したわけですが、
インターネットではいろいろな情報が掲載されていました。
ゴーンさんもケリーさんも、逮捕・勾留の段階ですし、
判決で有罪が確定するまでは無罪という前提で扱われるべきです。
それに両名とも「否認(認めない)」という立場のようです
(もしかしたら事実関係から「まったく違う」と言って
いるのかもしれませんね)。
ただ、この両名を逮捕すると言うことは、
日本とフランスの国益問題に特捜が割り込むわけですから、
検察は確実な証拠を収集済みで、上層部を含めかなり慎重な
判断をしたものと推察します。
そこで、現時点で報道されている内容を前提にして
本件を少しだけ見てみようと思いました(推定無罪の
刑事原則と真逆の扱いをしてしまいそうで怖いのですが……)。
ゴーンさんがケリーさんに指示をして、ケリーさんが部下の
外国人執行役員1名と日本人幹部社員1名にメールで
不正行為の指示をしたらしいです
(もし本当ならメールで不正行為指示をするなんて信じられません。
不正をする人は不正指示を口頭で行うことが多いのですが…。)。
そのメール指示をうけた外国人執行役員と日本人幹部社員の
2名(不正行為の実行者)が、東京地検特捜部と司法取引を
したそうです。
そして、ケリーさんが不正行為を指示したことの物証として、
メール等を東京地検特捜部に提供し、東京地検特捜部が
ゴーンさんが逃げられないタイミング(飛行機で日本に来るところ
を空港で逮捕令状をもってお出迎え)で逮捕となったようです。
司法取引者は上記2名だけで会社(日産)は司法取引対象者では
ない、とのことです。
インターネットニュースのおかげで、ちょっぴり雰囲気が
分かったような気がしました。
裁判による真実解明はまだまだ先のことと思いますが、
逮捕ニュースが衝撃的だったので、すこしでも逮捕側の
初動の事情が分かって、よかったです。
もうひとつ、私がどうしても「理解できない」ことがあります。
それは腹心のケリーさんの行動です(あくまで逮捕側の認識を
前提にしたもので、ケリーさんは否定しているかもしれませんが)。
ケリーさんは弁護士出身らしいです。
弁護士出身なら、たとえ日本の法律に精通していなくても、
法律の中身(法規制)はどの国もかなり共通していますから、
ゴーンさんと自分(ケリーさん)がやっていることが、
どれだけの重罪か、どういう結末になるか、ということを
十分に分かっていたはずです。
それに、不正指示をメールで行ったとのことですが、
弁護士出身のケリーさんが自分で自分の首に縄をつける物証を
つくるとは。
……(もし事実なら)正気の沙汰とは思えません……
ゴーンさんもケリーさんも、まさか、「絶対にばれない」と
でも思い込んでいたのでしょうか。
ちなみに、単独犯で事情は自分しか知らない、というときは、
「ばれない」ということはありえるかもしれません。
単独犯と思われる殺人事件で迷宮入り事件があるのは、そのためです。
しかし、犯行者が複数の場合や犯人以外で事情を知っている者が
いる場合は、「ばれる」可能性は非常に高くなります。
それなのに……。
私は、ここで、敬愛する中村天風先生の人生観を思い出しました。
天風先生は、
「正直、親切、愉快に」
と断言しています。
その方が幸せになるからです。
そして、「幸せとは心が平安な状態なこと」と定義しています。
お金や地位がどれだけあっても、「心が平安でない」なら、
それは幸せではありません。
ゴーンさんは、いままでの暮らしと全く違う「東京拘置所」に
いるらしいです。
東京拘置所といえば田中角栄氏の言葉を思い出します。
自宅の中に文献があるはずですが、次のような言葉だったという
記憶です。
「俺はだれよりも小菅(東京拘置所のことです)のことを知っている。
あそこでは花なんか無駄だ。食い物を持って行け。」
東京拘置所は超高級ホテルとか超高級住宅とは全く違う
居住環境ですから大変だと思います。
これからのことを考えて不安と恐怖でいっぱいで、
「心は平安」どころではないと思います。
本当に大変な状態だと思います。
今回の事件で思いました。
私は Much Money でなくても Some Money があって
(No Money は困りますが……)、
「心は平安」であれば、
そちらの方がずっといいです。
今回のゴーンさんとケリーさんの逮捕は、
あまりにびっくりしたニュースでしたので、自分の気持ちの
整理をかねて、私が感じたことをまとめさせていただきました。
今回はかなりの長文になってしまいましたので、
最後までお読みいただいた方には本当に感謝申し上げます。
(次回は短いものにしますので、次回もよろしくお願いいたします。)
吉田 良夫